明治時代から地域に根付くコミュニティ・スクール

学校、家庭、地域みんなで子どもたちを育む開校150周年を迎えた「川越市立大東東小学校」

1873(明治6)年の開校より150周年を迎えた「川越市立大東東小学校」。豊かな自然環境に恵まれたおだやかな雰囲気の学校で、534名(2024(令和6)年1月現在)の児童がともに学校生活を送っている。正門の近くにある大きな欅の木がシンボルで、欅のようにしっかりと根を張り、「心豊かでたくましく生きる児童」の育成を目標にさまざまな取り組みが進められている。

今回は2023(令和5)年度に着任した山本敦子校長先生を訪ね、学校の概要や特色ある取り組み、地域とのつながりなどについてお話を伺った。

インタビューにご協力いただいた、山本校長先生
インタビューにご協力いただいた、山本校長先生

1873(明治6)年に開校。歴史ある地域に根差した学校

――はじめに、「川越市立大東東小学校」の概要と特徴についてお聞かせください。

山本先生:「川越市立大東東(だいとうひがし)小学校」は、旧大田村の豊田小学校、武塚小学校を前身とする学校で、1873(明治6)年に開校し、今年150周年を迎えました。3世代、4世代にわたって本校出身というご家庭も多く、地域を愛する気持ちが伝わってきますし、学校運営にもみなさん協力的でとてもあたたかい学校です。

今年度は11月に行われた記念式典をはじめ、バルーンリリースや尚美学園大学の吹奏楽コンサート、プロ野球選手の講演など、さまざまな記念事業が行われました。地域の方からもお話を伺う機会が多く、地域のみなさんが代々学校のために尽くしてくださっているのが分かり、大変感慨深く改めて学校の魅力を感じました。

児童数は2024(令和6年)年1月26日現在534名で、スマイル学級3クラス、各学年3クラス編成の計21クラスで運営しています。

特徴としては、正門の近くに学校のシンボルとして親しまれている大きな欅の木があります。本校の目指す児童像にもけ・や・きの頭文字をそれぞれ入れて、「笑顔輝く け(元気)や(優しさ)き(勤勉さ)の子」としています。欅のように心にしっかりと根を張り、心豊かでたくましく生きる児童の育成を目標にしています。

学校のシンボルでもある欅の木
学校のシンボルでもある欅の木

「豊かな心の育成」を重点的な取り組みとして掲げる

――学校HPに掲載されている「グランドデザイン」を拝見しました。注目すべきポイントについてお聞かせいただけますでしょうか?

山本先生:2023(令和5)年4月に本校の校長として着任した際、経営方針の最初に「豊かな心の育成」を掲げました。具体的な目標としては「進んであいさつの定着、無言清掃の徹底、発展」「よさを認め、発揮できる学年・学級づくり」「生命を尊重し、自他を大切にする人権教育の推進」「豊かな心を育む道徳教育、望ましい人間関係を育てる特別活動の推進」としています。

また、「豊かな心の育成」のために地域や社会とのつながりも強化しようと考えており、校外の人材の力も加え、授業に取り入れようと取り組みを始めているところです。

2023(令和5)年度のグランドデザイン(提供:川越市立大東東小学校)
2023(令和5)年度のグランドデザイン(提供:川越市立大東東小学校)

子どもたちの教育活動を支援する「学校応援団」

――2021(令和3)年度に「コミュニティ・スクール」へと移行し、「学校応援団」も設立されたようですが、具体的な取り組みについてお聞かせいただけますでしょうか?

山本先生:2023(令和5)年度に川越市内すべての市立学校が「コミュニティ・スクール」へと移行しました。本校は2021(令和3)年度にモデル校として指定を受け、取り組みを進めてきました。「コミュニティ・スクール」というのは学校運営協議会を設置した学校のことで、本校では5名の委員とともに学校運営についての協議を進めています。地域の自治会長さん、保護者の代表者、民生児童委員、放課後パワーアップ教室のリーダー、そして学校の近くにある「尚美学園大学」の教授が委員長として成り立っています。

また2022(令和4)年度には本校独自の「学校応援団」も設立され、さまざまな場面で学校の取り組みを支えていただいています。具体的には家庭科の調理実習やミシンを使うときの補助指導、また、プールの見守りや1年生の給食片付け、清掃補助などもしてくださっています。「学校応援団」のメンバーは保護者の方を中心に地域の方もいらっしゃって、みんなで子どもたちを見守っています。

校舎外観
校舎外観

子どもたちの「大好き!楽しい!」を目指す、全教員で追究する算数指導

――特色ある教育活動や課外活動などはございますか?

山本先生:ひとつは算数の研究です。川越市では「川越授業スタンダード」という学力向上プランに基づいて授業づくりが進められています。「めあて」「見通し」「対話・協働」「まとめ」「振り返り」という授業の流れを基本として、教科に応じた「学び合い」や「練習等」を組み合わせて授業づくりを行なっています。

本校の研究主任は川越市の教師向け学力向上リーフレットの動画モデルとなっていて、本校の算数研究をひっぱっています。本校では「川越授業スタンダード」をさらに発展させた本校独自のスタイル「大東東小スタンダード」をもとに算数の授業のやり方を統一し、全員が研究授業を行い、授業力を向上させています。算数指導の取り組みはとても熱心で、担当する先生方の熱意を感じます。

校内には算数オリンピックの掲示がされています。
校内には算数オリンピックの掲示がされています。

代々引き継がれている「無言清掃」も豊かな心の育成につながる取り組みのひとつ

――「豊かな心の育成」に関する取り組みはございますか?

山本先生:代々引き継がれている「無言清掃」はこの学校の特色のひとつだと思います。掃除の時間の最初と最後に黙想するんですが、黙想して、心を落ち着かせてから掃除に取り組みます。

その名の通り、みんな喋らないで黙々と掃除に取り組みます。掃除の仕方も統一されていて、掃き掃除、拭き掃除、から拭きの順で行います。古い校舎ではありますが、掃除がすみずみまで行き届いてとても綺麗です。

1967(昭和42)年までの校舎
1967(昭和42)年までの校舎

自然環境に恵まれた心やすらぐ大東エリア

――子育てをするうえで学校周辺エリアの魅力はいかがですか?

山本先生:このあたりは自然環境に恵まれているのが何より素晴らしいと思います。中心市街地とは全く雰囲気が違いますし、ここにいるだけで気持ちが和みます。校庭にある大きな欅の木もそうですし、まわりには田畑が広がっていて、天気の良い日には遠くにとても美しい富士山が見えて、心が癒されます。

あと地域の方の見守りもとてもあたたかくて、毎朝、通学班の集合場所に保護者や地域の方が集まって送りだして下さっています。みんながそろうまで一緒に待っていてくれたり、安全面に配慮してくださったり。毎日のことなのでなかなか大変なことだと思いますが、本当に有り難く思います。

恵まれた自然豊かな環境が広がる
恵まれた自然豊かな環境が広がる

山本先生:また、「放課後パワーアップ教室」という3年生を対象にした算数の補習教室がありまして、パワーアップ教室の指導員として地域の方々のほか、「尚美学園大学」の学生さんたちが学校へ教えに来てくれるんです。将来教員を志望する学生さんも多く、大学の授業の一環として来てくださっています。地域とのつながりを感じられる取り組みのひとつです。

ご家庭や地域、学校の先生など多くの大人たちに見守られながら育つ素直な子

――最後にこれからこの地域に移り住む方へ向けてメッセージをお願いいたします。

山本先生:子どもたちの様子を見るとその学校のことは概ね分かるものですが、着任したときに感じたのは本校の子どもたちは大変素直で人懐こく、とても子どもらしいなと感じました。音楽会で発表する姿を見たときもどの学年も本当に生き生きと歌うので、とても感動したのを覚えています。

それはきっとご家庭でたっぷりと愛情を注がれて、学校でも教員たちが親身になって接しているので、それが「豊かな心の育成」につながっているんじゃないかと思っています。これこそ本校最大の魅力のひとつだと思います。

小学校は算数や国語の勉強ももちろん大事ですが、それだけではなく、「一人ひとりを大事にしているよ」というサインを私たち教員から子どもたちへ送ることも大事なことだと思います。それが子どもたちの自信につながったり、自己肯定感を高めることにもつながったりしますので、これらを意識しながら日々教育活動に取り組んでいます。

埼玉県川越市・「川越市立大東東小学校」
埼玉県川越市・「川越市立大東東小学校」

川越市立大東東小学校

校長 山本 敦子先生
所在地:埼玉県川越市豊田本4-16-1
電話番号:049-243-3105
URL:https://www.city.kawagoe.saitama.jp/smph/kosodatekyoiku/sho-chu-ko-shien/shogakko/daitohigashi/index.html
※この情報は2023(令和5)年12月時点のものです。