埼玉県立川越高等学校 校長 青木勇藤先生 インタビュー

文武両道、自主自立を建学の志とする伝統の男子校「埼玉県立川越高等学校」

川越市で最も古い歴史があり、県内屈指の進学校として知られる「埼玉県立川越高等学校」。近年ではニュートリノの研究でノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章氏の母校として話題になり、また、“男子シンクロ”をテーマにした映画やドラマでも話題となった。伝統校としての気品と気風を守りながらも、地域と交わり、時代に順応し、優れた人材を社会に輩出し続けている「川高」。その強さの理由はどこにあるのだろうか。今回は同校のOBでもある、青木校長にお話を伺った。

自分の頭で考え、判断し、道を切り拓いていく

青木勇藤校長先生
青木勇藤校長先生

――まず、学校の概要を教えてください。

青木校長:本校は1899(明治32)年に、埼玉県の「第三尋常小学校」として開校し、1948(昭和23)年に新制の「埼玉県立川越高等学校」となりました。「一中」こと浦和高校、「二中」こと熊谷高校、それに次ぐ形で開校した本校は、川越市内で最も古い高校となっています。かつて私が在校生だった頃には、4分の1ほどは市内在住でしたが、今は遠方から通う生徒も増え、8割以上の生徒が市外から通っています。

学校のスローガンは「文武両道」と「自主自立」の2つ、これに付随して「質実剛健」もよく言っています。校歌にある「華美にはしらず実(じつ)に著(つ)き、智を耕して徳をしく」という言葉は、本校の特徴をよく表しているかと思います。「自主自立」の精神のもと、自分の頭で考え、判断し、道を切り拓いていく本校の生徒たちは、大学に行っても自主的に物事を進めていけると評判が良く、誇りに感じております。

「華美にはしらず実(じつ)に著(つ)き、智を耕して徳をしく」
「華美にはしらず実(じつ)に著(つ)き、智を耕して徳をしく」

――「自主自立」の精神を身につけるために、入学時に合宿があるそうですね。

青木校長:入学してだいたい10日ほどの頃、「くすのき宿泊研修」として長野県の菅平で1泊の合宿をしています。合宿にはOBの大学生が参加し、一緒にバスに乗って檄を飛ばしてくれたり、夜には学生時代の思い出や校風を語ってくれたりします。その中で、新入生は本校の雰囲気を理解し、「自主自立」がなんたるかも自覚していってくれるようです。OBの存在は偉大ですね。

「くすのき宿泊研修」の様子
「くすのき宿泊研修」の様子

生徒の意欲に応え、成長を後押しするきめ細やかな学習環境

授業風景
授業風景

――学習面について、特徴的な取り組みがありましたら教えてください。

青木校長:最も大切なのは普段の授業です。「教科書を教える」のではなく「教科書で教える」、教科書に基づきつつ大学レベルまで踏み込んだ授業を展開しています。最近は特に、プレゼンテーションやコミュニケーションスキルを培うような手法も積極的に取り入れています。

独自という視点ですと、いわゆる「補習」とは別に、「自主ゼミ」があります。生徒から、この分野をもっと掘り下げたいと声があがれば、教員がそれに応えてゼミナールを開きます。週に1回程度、通年のものもあれば、期間を区切って1学期だけ開く場合もあります。

もちろん、夏休みの講習等もあり、今年度の夏期講習では60講座が開かれ、のべ1、500名が参加しました。理系・文系別はもちろん、難関私大を念頭に置いたものや、国立の中でも東大・京大など最難関に特化したものなど、きめ細かくジャンル分けされた講座を開いています。

――2015年度まで文科省の「SSH(スーパーサイエンスハイスクール)」に指定されていたそうですが、その後も独自の取り組みとして理系学習の強化に取り組まれているそうですね。

青木校長:本校は「SSH」に11年間指定され、文部科学省からも非常に高い評価をいただきました。その間に蓄積したノウハウを活かし、また、PTAや多くの卒業生から理解と賛同もいただき、「川高サイエンス探究」という取り組みを2017(平成29)年の4月からスタートしました。

グローバル教育にも力を入れている
グローバル教育にも力を入れている

このほか、比較的新しい本校独自の取り組みとしては、夏休みに行っている「グローバルリーダーシッププログラム」があります。本年度で3年目を迎える事業で、主に1年生と一部2年生が参加し、1週間ほど「UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)」の学生を招いて、大学生1人を4~5人で囲んで「模擬留学」体験をします。

短期留学での集合写真
短期留学での集合写真

さらに、このプログラムに参加した生徒の中から希望者を募り、春休みには現地への短期留学を行っていて、例年20~30人ほどが参加しています。この留学では「観光」はゼロ、向こうでは大学に滞在し、大学生やスタッフと「リーダーシップ」について、ディスカッションやプレゼンをひたすら繰り返します。観光の要素が強い留学も多いですが、本校はもっと「本気」のカリキュラムです。参加した生徒からも「人生観が変わった」といった感想を聞いています。

――進学指導について、現役合格を重視するなど、特に力を入れている点はあるのでしょうか。

青木校長:私が在校していた数十年前は、現役で進学する生徒は3割ほどでしたが、今は5割以上の生徒が現役で進学しています。そのため、現役合格を目指す生徒を後押しできるよう、補習を志望校に合わせて細かく設定し、問題集なども積極的に活用しています。ただし、本校は「自主自立」が基本ですから、手取り足取りにはならないよう、自主的に計画を立てて勉強するための手助けとなるような指導をしています。

部活動や文化祭にも全力で取り組み、「文武両道」を実現

部活動も活発だ
部活動も活発だ

――全国的に有名な水泳部をはじめ、ユニークな部活動が沢山あって、運動系、文化系とも活躍されているそうですね。

青木校長:私が赴任してからの過去3年間に関しても、文化系では物理部が「ロボカップ世界大会」に出場し、AIを使った自律型のロボット競技で19か国中6位に入賞しました。美術部も例年、全国まで行っています。

「ロボカップ世界大会」の様子
「ロボカップ世界大会」の様子

ほかにも、男声合唱部の定期演奏会も非常に人気が高いですし、イベントにも頻繁に呼ばれています。近隣の小中学校からは周年行事の時によく声がかかり、部員がその学校の校歌を編曲して、男声四部合唱で披露しています。

運動系では、弓道部の生徒がインターハイ準優勝、剣道部の生徒が県大会で優勝、とこちらも輝かしい成績を残しています。水泳部は全国的に有名になった部活で、今も沢山の部員が在籍し、文化祭ではお馴染みのシンクロも披露しています。他にも多くの部がありますが、どの部もそれぞれ、非常に一生懸命に活動しています。

一躍有名になった水泳部のシンクロ
一躍有名になった水泳部のシンクロ

――応援団ならぬ「応援部」があり、川高名物となっていると聞きました。

青木校長:本校は応援部は非常に規模が大きく、活発に活動しています。新入生は入学式の次の日から「應援練習」というものがあり、団員に叱咤激励されながら、必死に校歌や応援歌を覚えます。これも川高の良き伝統です。

学ラン姿が勇ましい応援部
学ラン姿が勇ましい応援部

運動部の大会があれば応援に行き、地元のお祭りにもお呼ばれし、いろいろな場所で応援を披露しながら、皆さんに親しんでもらっています。

――「文武両道」を実現させるために、学校として何か工夫をされているのでしょうか。

青木校長:生徒には、「バランスを考えてやるように」と指導していますが、特別なことはしていません。部活を頑張っている生徒は集中力があり、切り替えも上手ですから、部活が理由で受験に失敗するということは少ないかと思います。3年の夏休み以降はかなり集中してかかりますから、この時期からのびる生徒が多いですね。運動部と文化部で、現役合格率が違うということもありません。

――秋の文化祭「くすのき祭」が、たいへんな人気と聞きました。見どころを教えてください。

青木校長:「くすのき祭」は9月上旬の土・日曜日、2日間開催し、例年1万7、8千人ほどの来場者を迎えています。これは私も大変な数字だと思っています。文化部の活動の発表や、水泳部の発表も当然人気ですが、このほかにも伝統的な「門」という文化祭の目玉があります。

緻密に作り上げられた「門」
緻密に作り上げられた「門」

これは例年、世界の建築物をモデルにして制作していまして、お城、教会、寺院など題材も多彩です。本校にはこれを作るための「門班」という組織があり、100名以上が関わって制作しています。

長い歴史を積み重ねたからこその、繋がりが財産に

OBの梶田さんによる講演会
OBの梶田さんによる講演会

――OBや父兄、地域との関わりについてはいかがでしょうか。

青木校長:同窓会からは学校の教育活動にさまざまな支援をいただいています。本当に有り難いことです。先ほど触れたグローバル関係や理科関係の事業、また部活動においても、サポートをしてくださり、大会に行けば激励もしてくださいます。

OBの1人である梶田さんが2015(平成27)年にノーベル物理学賞を受賞されました。その発表があった当日に同窓会の方が早速アポを取ってくださり、来校していただく機会を作ってくださいました。それからも何度か講演や指導をしていただいています。梶田さん以外にも、OBに著名人が多いので、毎年、OBで活躍している方を呼んで文化講演会も開いています。

OBを招いて文化講演会も開いている
OBを招いて文化講演会も開いている

地域との関わりについても、非常に良好な関係が保たれていると思います。応援部、音楽部、ブラスバンド部などの地域のお祭りでの活躍もその一例ですし、近隣の小学校では「子ども科学教室」も開いています。今後も地域の方にとって、身近な学校でありたいと思っています。

――最後に、川越エリアの魅力を教えてください。

青木校長:特にこの辺りは、もともとお城であった地区のため、本校以外にも小中学校や博物館、幼稚園などが多く、文教エリアとしての雰囲気が醸成されています。落ち着いていて、静かで、勉学に没頭しやすい良い環境だと思います。

歴史のある街で、観光資源に非常に恵まれているという点も魅力ですね。蔵造りの街並みも、私が学生だった頃はまだ雑然としていましたが、今はきれいに整備されました。本川越や川越の駅の辺りには商店街もあって、活気がありますし、いい街だと思いますよ。

「埼玉県立川越高等学校」校長 青木 勇藤先生
「埼玉県立川越高等学校」校長 青木 勇藤先生

埼玉県立川越高等学校

校長 青木 勇藤先生
所在地:埼玉県川越市郭町2-6
URL:http://www.kawagoe-h.spec.ed.jp/
※この情報は2017(平成29)年12月時点のものです。