スペシャルインタビュー

「小中一貫教育」にも取り組む創立140余年の「越ヶ谷小学校」

1873(明治6)年の創立より144年目を迎える市内でもっとも歴史のある学校のひとつ「越谷市立越ヶ谷小学校(以下、越ヶ谷小学校)」。再開発によって整備された「越谷」駅より徒歩4分の旧日光街道の近くに位置し、歴史的景観と近代化した街並みとが共存する住宅地に囲まれています。2015(平成27)年度より越谷市教育委員会の委嘱を受けて「小中一貫教育」への取り組みを進めている研究開発校としても知られ、その取り組みに注目が集まっています。今回は「越ヶ谷小学校」で10年間に及び現場の教諭として勤務し、2014(平成26)年度に校長として再度着任された橋本公作先生に、学校の特色と地域の魅力についてお話を伺いました。

1873(明治6)年開校の歴史と伝統のある小学校

越谷市立越ヶ谷小学校
越谷市立越ヶ谷小学校

――まずは学校の沿革と概要について教えてください。

「越谷市立越ヶ谷小学校(以下、越ヶ谷小学校)」は、1873(明治6)年の開校より144年目を迎える歴史と伝統のある学校です。再開発によって整備された「越谷」駅より徒歩4分ほどの旧日光街道の近くに位置し、古くからの街並も残る落ち着いた住宅地に囲まれています。
2017(平成29)年度の新入生は4クラス137名で、全校児童数は昨年度より27名ほど増えて799名になりました。
駅前の再開発に伴う児童数の増加に対応するべく、2013(平成25)年度より校舎西側の仮設校舎を活用して学校運営を行っておりますが、越谷市の推計によると今後数年間引き続き増加傾向にあるようで、さらなる児童数の増加が見込まれています。

校舎から見える周辺の街並み。高層マンションなども目立つ
校舎から見える周辺の街並み。高層マンションなども目立つ

「いのち」「学習」「人」の3つを大切にする教育活動

――今年度の教育方針や、特色のある取り組みについてお聞かせください。

昨年度に引き続き「いのち」「学習」「人」の3つを大切にする学校として、「児童一人一人のよさを見出し、可能性を引き出す教育」を推進しています。 「いのち」は交通事故防止および緊急災害時における児童の安全確保を徹底する安全教育の充実と、一年を通じて花が咲き誇る潤いのある教育環境の整備、「学習」は2015(平成27)年度より越谷市教育委員会の委嘱を受けて研究が進められている「小中一貫教育」への取り組み、「人」は埼玉県教育委員会から委嘱を受けて研究する「いじめ防止のための望ましい人間関係づくり」など多彩な取り組みを行っています。

授業風景
授業風景

なかでも、2015(平成27)年度から研究が進められている「小中一貫教育」への取り組みは、「越ヶ谷小学校」「東越谷小学校」「花田小学校」「中央中学校」の4校で取り組んでおり、3年目を迎えます。越谷市の「小中一貫教育」を推進する先進的な研究として注目を集めています。

これまでにも2000(平成12)年度の「総合的な学習の時間」の導入に先立ち、当時の文部省より調査研究開発学校の指定を受け4年間(平成9~12年)に及ぶ研究を行ったり、2005(平成17)年度には文部科学省より「学校を中心とした食育推進事業」の研究を委嘱され“食育”にも取り組んだりと、さまざまな研究発表に挑戦してきました。
研究開発校として指定を受けてきた背景には、歴史と伝統のある学校であると同時に、旧日光街道沿いに今も残る昔ながらの商店や地域の方々、保護者の学校教育に対する協力的な姿勢が評価されたことも大きく、推薦理由のひとつとして挙げられていたようです。

ミニトマトの育成・観察
ミニトマトの育成・観察

9年間を通じて一人ひとりに応じた個別の対応を工夫できる「小中一貫教育」

――「小中一貫教育」の取り組みについて詳しくお聞かせください。

2015(平成27)年度から越谷市でスタートした「小中一貫教育」への取り組みですが、その目的は「学力の向上」「中1ギャップの解消」「自己肯定感の高揚」の3つとされています。
なかでも最大の目的は「学力の向上」にあるのですが、板書の仕方やノートのとり方ひとつをとっても学校や先生ごとに違いがあると、それだけでギャップを感じてしまう子どもも少なくないので、発達段階に応じた学習の仕方を関係校で統一する必要性があります。

体育館での授業の様子
体育館での授業の様子

本校からは「中央中学校」と「富士中学校」にそれぞれ半数ずつ進学いたしますが、研究開発指定校として一緒に研究に取り組む「中央中学校」はもちろん、「富士中学校」でも同様の取り組みが徹底されているので、どちらの学校へも心配なく安心してスムーズに進学していただけると思います。

課外活動や陸上競技会の賞状
課外活動や陸上競技会の賞状

都心部にアクセスの良い「越谷」駅の近くという地域性もあって都内の私立学校に進学を希望するご家庭が多いのも事実ではありますが、小中それぞれの教職員が綿密に連絡を取り合って、一人ひとりに応じたきめ細やかな個別の対応を工夫できるのは「小中一貫教育」の良いところで、何よりの安心感につながると思います。

「小中一貫教育」への取り組みは学習面以外にも、中学校への一日入学体験や、中学生による夏季補習学習のお手伝い、卒業生による課外活動の指導など多岐にわたる交流活動を行っています。このような取り組みを行ったことで、実際に不登校の子どもが減少したという成果もあらわれています。

水泳の授業
水泳の授業

地域に古くから伝わる「木遣歌(きやりうた)」や「金管バンド」の音楽活動

――“本校のイチオシ”にある音楽活動についても教えてください。

地域に古くから伝わる「木遣歌(きやりうた)」や「金管バンド」の活動をはじめ、学校公開日に行う「ソングスクエア」も1998(平成10)年度から続く恒例のイベントで音楽への取り組みが盛んです。「木遣歌」と「金管バンド」はいずれも課外活動として行っているのですが、「越谷市木遣保存会」の皆さまにお越しいただき、週に一度、指導いただいています。「木遣り」とは木を運ぶという意味で、重い木材や石を運ぶ際に大勢で息を合わせるために唄ったいわゆる作業唄で、江戸で火消しの鳶職人のたしなみとして発展し、棟上や祝儀、祭礼などでも歌われるようになった民謡のひとつです。

現在3年生から6年生までの22名が活動に参加し、地域のお祭りで披露したり「こしがや能楽堂」や「越谷市中央市民会館」などの大きな舞台でも発表しています。

また「金管バンド」は卒業生も多く所属する「中央中学校」の吹奏楽部にも指導をいただきながら週末等に練習する盛んな活動で、学校の行事や地域のイベントなどで演奏を披露してくれます。

地域の協力があってこそ実現できる魅力的な学校運営

――地域との連携や取り組みについて教えてください。

昨年度、PTAの前身となる保護者会が発足されてから80年目を迎え、記念樹の植樹や横断幕の制作など記念事業を行いました。 本校ではPTAによる活動をはじめ校内の掃除や「町たんけん」での取材協力に至るまで年間のべ400~500名もの地域の方々にご協力をいただいており、「木遣歌」や「金管バンド」の活動なども保護者はもちろん地域の協力があってこその取り組みだと思っています。

また本校には以前から登校班が無いのですが、“自分の命は自分で守る”という自立の精神を育むとともに、旗持ち当番以外にも地域の大人たちがみんなで子どもたちを見守ってくれるため、今も登校班を設けずに安心して通学させることができています。

校内の風景
校内の風景

さらに地域とのつながりを感じる瞬間として、学校行事に参加いただくと良く分かるのですが、日ごろの学校運営を支えてくださる来賓として40名もの方々にお集りいただきます。また運動会ともなるとご家族はもちろん地域の方々も多く集まり午前・午後の2部制でさらに立ち見もお願いしているのですが、学校側へのクレームは一切無く、おたがい譲り合いながら子どもたちと一緒になって行事を盛り上げてくださいます。

歴史的景観と近代化した街並みとが共存する地域

――地域の特色や魅力についてもお聞かせください。

本校の学区域には「越谷」駅周辺の再開発にともない高層マンションや商業施設があらたに出店し、ここ5年ほどで著しい発展を遂げました。一方、旧日光街道沿いには明治・大正時代に建築されて国の登録有形文化財に指定された商店もあり、歴史を感じさせる古い街並みも残っています。

古い街並みが残る「越谷本町商店会」
古い街並みが残る「越谷本町商店会」

地域の特色としては、歴史的景観と近代化した街並みとが共存する地域であるということと、旧日光街道沿いの地域ならではの人情とあたたかみのある雰囲気が挙げられると思います。
児童の約半数は線路の西側にある新興住宅地から通って来るのですが、旧日光街道沿いにはおじいちゃん、お父さんと3世代にわたって本校に通うご家庭も少なくなく、学校運営に深い理解のある地域とのつながりは何よりの魅力だと思います。

「越谷」駅
「越谷」駅

本校の教員として10年ほど過ごした時期もあったのですが、十数年ぶりに校長として着任したときに目にした街の移り変わりとは対照的に、学校を影で支えてくださっている地域の方々は“当時と変わらない”と感じることのほうが多く、日々心より感謝しています。

校長室
校長室

越谷市立越ヶ谷小学校

校長 橋本公作先生
所在地:埼玉県越谷市中町1-41
URL:https://school.city.koshigaya.saitama.jp/koshigaya_e/
※この情報は2017(平成29)年6月時点のものです。