2世代にわたって選ばれるランドセル専門店「ガルソンのカバン」

さいたま市中央区下落合の住宅地の一角にある「ガルソンのカバン」は、1975(昭和50)年に創業したオーダーメイドランドセルの専門店。厳選された素材と熟練された職人技術で作られるランドセルは、購入者の口コミなどで広がり人気を集めている。
店を訪ねると、お父さんお母さんに連れられて、恐るおそるお店に入ってきた小学校入学を控えた小さな子どもと、店主(75歳)が言葉を交わしている。ランドセルの販売を通じて40年近くにわたって子どもたちと会話を交わしてきた店主の言葉は、陽気な親戚のおじさんとのような気軽さがあり、親心にも配慮した思いやりと気遣いにもあふれている。「何色が好き?」と、子どもの意思を聞き出すところからはじまる「ガルソンのカバン」のランドセル作り。今回は、知っているようで知らないランドセルについてのお話と、この街の魅力について、「ガルソンのカバン」店主の嘉藤正寿さんに伺った。

創業から38年を迎える老舗ランドセルメーカー

代表の嘉藤正寿さん
代表の嘉藤正寿さん

――まず、お店を開業したきっかけや経緯についてお聞かせください。

嘉藤さん:会社を設立して今年で38年になります。
もともと家業で鞄やランドセルを作っていた訳ではなく、友人がランドセルの販売をしていたのがきっかけで、それまで働いていた会社を辞めて独立・起業したのが有限会社「ガルソンのカバン」です。
設立当時は店舗を借りる余裕も無かったので、自宅の1階を改装して営業所にしたのがはじまりです。こちらの営業所でオーダーを受け、ランドセルを作る工場は東北地方にあります。 

時代のニーズに応じてオーダーメイドのランドセル作りを実現

嘉藤さんの自宅1階を改装してできた営業所
嘉藤さんの自宅1階を改装してできた営業所

――「ガルソンのカバン」で作るランドセルについて、時代ごとの変化はありましたか?

嘉藤さん:創業当時から変わらず「ガルソンのカバン」として販売していますが、「ガルソン」にはフランス語で“元気な子”という意味があります。
ランドセル自体は、当時皇太子だった大正天皇が学習院初等科に入学する際に、伊藤博文がお祝いとして軍の将校が使っていた背嚢を献上し、それがきっかけで世間に広まったものと言われています。ハンドバックや他の鞄と違ってデザインが決まっているため、最初は他社との差別化はほとんどなかったですね。色は赤と黒、内張りも糸も使う色は決まっていたので、鞄を作る技術というよりも、販売力や営業力のほうが売れる売れないに大きく影響していたというのが本当のところです。当時の商圏はここから一時間くらいのところで、地元の旧与野市をはじめ、浦和、大宮、川口のあたりも回りました。

赤と黒だけでなく色々なカラーが選べるようになったランドセル
赤と黒だけでなく色々なカラーが選べるようになったランドセル

嘉藤さん: 2000年頃から、某量販店がカラーランドセルの販売に力を入れ始め、赤と黒以外の様々な色のものや、ピカピカ光るデザイン、つや消しのものなど、いろんな色のランドセルができるようになりました。
そのような時代の変化を受け、うちも赤と黒だけでなく、内張りの色を変えたり、糸やフチの色を変えたりなど、一歩進んだデザインを提供したところ、大きな反響がありました。

モダンな色合いがおしゃれ
モダンな色合いがおしゃれ

お客様の目が肥えてきて、お客様からも「ここはこうならない?」などと色々な要望をいただくようになり、作り手もこだわって6年前から現在のようなオーダーメイドのランドセルを提供できるようになりました。

小学校入園前にお子さんを連れてお店に来るお母さん、お父さん方のなかには、子どもの頃にうちのランドセルを背負って学校に通っていた方もいたりと、2世代にわたってお使いいただいているご家庭もありますよ。

関東圏で特にニーズの高い牛革の「ボルサ」

本革のランドセル
本革のランドセル

――「ガルソンのカバン」ならではのこだわりや特長はどのようなところでしょうか?

嘉藤さん:量販店などで売られているランドセルは、軽く、切れたりすることもないという理由から、合成皮革のものがほとんどですが、「ガルソンのカバン」では、牛革の「ボルサ」と「人工皮革」を使用しています。
本革のほうが手間がかかる分、値段も高いのですが、関東圏は特に本革をステータスとして捉えている方が多く、当店のお客様の8割は「ボルサ」を求めて買いに来ます。

関東圏での需要が多い牛革の「ボルサ」
関東圏での需要が多い牛革の「ボルサ」

色について言えば、その年ごとの流行も若干はありますが、男の子は落ち着いた黒っぽい鞄が7〜8割でほとんど変わらず、女の子の選ぶ色はバラエティーに富んでいる傾向はありますね。それと都心部ではモダンな色も人気です。

 

すべて無料で引き受ける6年間の手厚い保証サービス

お店のカタログ
お店のカタログ

――そのほか、特徴的なサービスなどはありますか?

嘉藤さん:インターネットの時代になってからは地元以外に、東京、千葉、神奈川といった関東圏はもちろん、地方からも「カタログが欲しい」と問い合わせが来るようになりました。
でもインターネットの画面で見る色と実際の色とが違ったり、手触りも確認してみたいという要望もあったりするので、お店に直接来られない方には、実際の皮と糸の色見本を送っています。また、お店のホームページにはオーダーメイドのシミュレーションができるコンテンツもあります。
注文や問い合わせは、例年6月末から8月頃に最も増えるのですが、1つのランドセルを制作するのに半年はかかるため、年々その時期は早まって来ており、入学式が終わったばかりの4月にも翌年入学に向けた問い合わせや来店があるほどです。
また、「6年間の保証サービス」そのものは珍しくはないとは思いますが、当店では自然故障でも故意にやったものでも、すべて無料で修理するのは特徴だと思います。
簡単に治るものであれば営業所にいる私たちが行いますし、糸をほどいて分解しなくてはならないような修理の場合はいったん工場で預かって対応しています。
ランドセルは、他の鞄のようにいくつも買うものでも無いので、今後もこれまでと同じようにお客様のご希望に合うランドセルをひとつひとつ丁寧に提供していきたいと思います。

長年この場所に居て感じる、街の変化や魅力

接客中の嘉藤さん
接客中の嘉藤さん

――地域のつながりや、地域の魅力についてお聞かせください。

嘉藤さん:旧与野市の下落合に引越してきたのは私が6歳のときで、かれこれ70年はここで暮らしていますが、当時はまだまわりがさつまいも畑や田んぼで、埼京線も通っていなければもちろん新都心もありませんでした。その頃を知っているだけに、当時と比べて今は買い物する場所も多いし、お医者さんや交通の便も良くて便利な場所だと思います。
さいたま新都心の「コクーンシティ」や、新しくできた「スーパービバホーム さいたま新都心店」、「西友 与野店」などのスーパーもあって、買い物には困りません。

スーパービバホームさいたま新都心店
スーパービバホームさいたま新都心店

地元の「下落合小学校」からは2年生の「まち探検」という学校の活動で子どもたちが見学に来てくれて、「何色あるんですか?」とか「ひとつ作るのに何日かかるんですか?」と熱心に質問をしてくれたり、御礼や感想の手紙もくれたりと交流があります。

下落合氷川神社
下落合氷川神社

下落合公民館の隣にある「下落合氷川神社」で町会のお祭りが開かれると、近所の子どもたちが集まって賑わいますが、昔からこの土地に住んでいる人と、新しく移り住んで来た人との接点もあって、しっかりとした地域になっていると思いますよ。

ガルソンのカバン 嘉藤さん
ガルソンのカバン 嘉藤さん

有限会社ガルソンのカバン

店主 嘉藤正寿さん
所在地 :埼玉県さいたま市中央区下落合4−3−13
TEL :048-854-4025
URL:http://www.galson.co.jp
※この情報は2017(平成29)年4月時点のものです。