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うらわ美術館 学芸員インタビュー

うらわ美術館
主幹兼事業係長 学芸員 森田一さん

浦和のアートを世界へ広げる

旧浦和市役所の跡地に造られた「浦和センチュリーシティ」の中に、2000(平成12)年に誕生した「うらわ美術館」。一風変わったロケーション、展示、コレクションが話題となることも多いさいたま市の公立美術館です。エントランスはハイクラスホテル「浦和ロイヤルパインズホテル」の豪華な雰囲気で包まれており、そこから美術館直行エレベーターで3階の美術館へと繋がります。今までの公立館には無かった立地条件に、初めて訪れる人は驚くことでしょう。今回はこの美術館で学芸員を務める森田一さんに、美術館の魅力と教育に関する取り組みについてうかがいました。 ※取材日:2013(平成25)年2月

まず、美術館の概要について教えてください。

うらわ美術館

開館は2000(同12)年となりまして、開館時は旧浦和市の美術館でしたが、その後すぐに市町村合併して、さいたま市の美術館となりました。さいたま市立の美術館はこのほか、「さいたま市大宮盆栽美術館」と、岩槻に人形に関する展示施設が計画されています。いわゆる「普通の美術館」という意味では、ここが唯一の美術館と言えるでしょう。旧浦和市には公立の美術館というのはありませんでした。そんな中、地元の作家さんをはじめとした方々から、「市の美術館が欲しい」という声が多くなってきまして、この複合ビル「センチュリーシティ」の完成に合わせて開館したのです。

常設展示、コレクションについて教えてください。

うらわ美術館

実は当館には「常設展示」というものは無いんですよ。通常、公立美術館では常設展示、企画展示、市民ギャラリーなど分けられていますが、「うらわ美術館」では大きな展示室を使って企画展示もします。また、コレクションの展示もしますし、期間を区切って市民にお貸ししたりもしています。

コレクションについてですが、美術館には「収集方針」というものがありまして、うらわ美術館ではこれが2つあります。1つは「地域ゆかりの作品」、もう1つは「本のアート」というものです。

ですから、企画展示に関してもこの2つの収集方針に沿うもの、テーマに関わるものが多くなっております。その中で美術館のコレクションを関連させて展示することもあります。もちろんそれ以外の展覧会も色々と行われていますし、市民の展示も行われます。

コレクションの1つである「地域ゆかりの作家」には、どんな方がいらっしゃるのでしょうか。

うらわ美術館

油絵では寺内萬治郎さん、高田誠さん、瑛九さん。工芸では増田三男さんなどが主要なコレクションとなっています。油絵が中心ですが、日本画、工芸など幅広い分野にわたっています。また、もう1つのコレクション、「本のアート」についても説明いたします。まず収集の経緯ですが、美術館の設立にあたって、旧浦和市が県庁所在地で、文教エリアという特性がありました。

「文教」「本」などのイメージを持たせようというアイディアがあったようです。この頃はすでに各地の地方の公立美術館が出揃っていた時期でして、「うらわ美術館」は後発でしたので、「後発としての特色をどのように出すのか」という点から、色々と検討して決まったものです。「本のアート」というジャンルは、今まで日本の公立美術館では手付かずだったジャンルでして、かつユニークな作品も多く、網羅しようと思えばとても幅広い、魅力的な領域でした。実は海外ではこのようなジャンルが非常に高い評価を得ているのですが、日本では未開拓でした。ゆえに、深く掘り下げる価値もあり、文教エリアのイメージにも合致する、ということだったようですね。本のアートのコレクションを専門にしている公立美術館はここが初めてであり、今でも唯一の美術館だと思います。

特に収集する本のジャンルは決まっているのでしょうか?

うらわ美術館

「ジャンル」という固定的なものはなく、時代の区分に沿って収集しています。20世紀の美術の流れを、本のアートでカバーできるようにコレクションを目指しています。例えば日本で言えば、近代の本の装丁、挿絵などの部分から、現代のブックオブジェに至るまでの流れをフォローしています。海外では有名なピカソやマティスの手がけた本の挿絵などに注目して収集しています。本の挿絵と言ってもオリジナル版画ですので、非常に発行部数が少なく、希少なものとなっているのです。今後の方針としては、さらに時代を遡行するようにコレクションを広げたり、同じ時代をより深く充実させようとしています。この分野には既成の体系というものがあまりありませんので、実際に集めながら、コレクションに特色を持たせているのです。

本のコレクションは何冊くらいあるのでしょうか?

うらわ美術館

冊数ではなくタイトル数でカウントしておりますが、いまは1,400タイトルほどでしょうか。コレクションに触れる機会は、企画展示の一部と期間を限定したコレクション展以外には残念ながらありません。当館には常設展示室がないため、つねに収蔵品に触れられるわけではないのです。年に2回ほど、いちばん小さな展示室D(視聴覚室)でコレクションの展示を行っておりますので、その際にご覧いただければと思います。

学校教育との関連について、どのような取り組みをされていますか?

うらわ美術館

スペースの制約上、美術館に来てワークショップや講演会を行う、という活動は難しく、学校の現場からの要望を受けて、「鑑賞の受け入れ」や「学校への主張授業」を行っております。また、本のコレクションの中でも、市販本の類であれば持ち出せるものがあります。それを小学校などに持っていって、実際に見て、触ってもらう、などという活用もしています。また、収蔵品を元にした「アートカード」を作り、これを持っていったり、現場の先生方に貸し出したりしながら活用しています。

うらわ美術館

出張授業には学芸員が行くこともありますが、最近は普及担当の職員がおりますので、その職員が出張していくことが多いですね。 このほかにも、通年ではありませんが、夏休みの期間の展覧会は子どもを対象にした展示を毎年恒例にしています。絵本の原画展などを行うことが多いでしょうか。夏休み期間中は展示室D(視聴覚室)を自由に創作してもらうための作業場としていまして、展示に関連した創作もしてもらっています。こちらは、子どもたちに限らず、一緒に来た大人も一緒に楽しんでもらえるように心がけています。 この作業場の内容を考える時には、小学校の先生方にも案を出していただいたり、実際にその場で創作のサポートをしていただいたりと、色々と協力していただいています。

最後に、浦和、北浦和の街の魅力について教えてください。

うらわ美術館

実は、浦和は絵描きが多いのです。一説ですが、関東大震災で被災して、疎開した絵描きさんが、「上野にちょうど行きやすい場所」としてこの地を選んだという云われがあります。いまは都内各地に美術館がありますが、当時は美術館や美術学校が上野に集中していたんですね。「鎌倉文士」などという言葉もありますが、それに対して「浦和画家」という言い方をする場合もあるようです。

昔からの文教エリアということで落ち着いた雰囲気がありますし、「美術館のある街」「アートのある街」ということにも、魅力を感じていただければ嬉しいですね。

ここ「うらわ美術館」以外にも、近くには県立近代美術館もあるので、「芸術」というものを生活の一部として感じられる土地だと思います。

うらわ美術館

今回、話を聞いた人

うらわ美術館 主幹兼事業係長 学芸員 森田一さん

所在地:埼玉県さいたま市浦和区仲町2-5-1 浦和センチュリーシティ3F
電話番号:048-827-3215
http://www.uam.urawa.saitama.jp/

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