インタビュー

創立70周年を迎え、ますます躍進する「さいたま市立常盤中学校」のいま

1947(昭和22)年の開校より節目となる70周年を迎えた「さいたま市立常盤中学校」。旧浦和市の中心地から北浦和、与野のあたりまで広範なエリアを学区域とし、文教エリアに位置する学校だ。また勉強のみならず部活動やコンクール、地域のお祭りで披露される「俊英太鼓」など、生徒の活躍の場は多岐にわたり、2017(平成29)年度に市内の駅伝大会で1位を勝ち取ったのも記憶に新しい。今回は2016(平成28)年度に校長として着任した山下誠二先生にお話を伺い、学校の特色や地域の魅力について教えていただいた。

さいたま市立常盤中学校 校長 山下誠二先生
さいたま市立常盤中学校 校長 山下誠二先生

創立70周年を迎えた歴史と伝統のある進学校

――まず学校の沿革や概要について教えてください。

「さいたま市立常盤中学校」は新しい学制に伴い1947(昭和22)年に設立された学校で、開校より70周年を迎えました。昨年度から記念事業のプレイベントを行い、71年目となる平成29(2017)年度にさまざまな取り組みを行いました。生徒数は2017(平成29)年4月に新入生329名を迎え、特別支援学級を含めると27学級923名の大規模な中学校です。学区域は「さいたま市役所」のある「浦和」駅のあたりから「北浦和」「与野」駅のあたりまで南北に広がるエリアが特徴で、学区内には「仲町小学校」「常盤小学校」「常盤北小学校」があります。教育目標は本校のホームページにある「学校だより」でもご覧いただけますが、「心豊かな中学生」「自ら学ぶ中学生」「活力あふれる中学生」を掲げ、子どもたちには行動目標に掲げている「さわやかなあいさつをしようね」「校歌を大切にしっかり歌おうね」「靴のかかとをしっかりそろえようね」というごく簡単なことしか伝えていません。着任して2年目になる今年度は目標をひとつプラスして、「名前を呼ばれた際に、しっかり返事をしようね」とだけ付け加えました。学習のことについてはこれまで一度も口にしたことが無いのですが、それは心配無いというわけではなくて、日々の生活や生き方がしっかりしていれば学習はおのずから付いてくるものだと思うのです。教育に熱心な浦和というこの地域性もありますし、「勉強、勉強…」と言わなくても子どもたちは学習にしっかり取り組めると思うので、校長の私はそれ以外のところで子どもたちに関わって行こうと考えています。これはあくまで私の考えですが、学校経営をするうえで“元気に登校して笑顔で下校させる”これが一番大切なことだと思っていて、先ほどの教育目標とは別に、「元気に登校」「笑顔で下校」というのを学校経営の柱に掲げているのはそのためです。

さいたま市立常盤中学校
さいたま市立常盤中学校

子どもたちの“気づき力”を高め、みずから変わるきっかけづくりを

――指導するうえで気をつけていることや心がけていることは?

学校という集団生活の場で子どもたちを指導するときに、ワクチン的な指導よりも私はビタミン的な指導のほうが良いのかなと考えています。あいさつをするよう指導したからといって、本質的に子どもの何かが変わるかといったらそうではありません。校歌をしっかり歌うよう指導しても、靴を揃えるよう指導してもすぐに何かが変わるものではないんです。でも、それを継続してやっていくことによってあいさつがきっかけで友だちができるかもしれないし、校歌を歌って母校愛が育まれるかもしれない。自分の靴を揃えるだけではなくて、他人の靴が揃っていなかったら黙って揃えてあげられるそういう子どもになってくれるかも知れません。

なぜ靴を揃えるのかというと、若いころに仕えていた当時の教育長が緊急時に誰がいて誰がいないかを瞬時に確認できるのは下駄箱だと言い出したのがはじまりです。下駄箱の奥に靴を突っ込んでしまうと、パッと横から見たときに生徒が校舎内にいるかどうか分からない。手前のラインにかかとを綺麗に揃えておくことによって、災害が発生したときに子どもたちの安全をいち早く確保することにもつながります。朝礼で子どもたちにもその話をしたことはあるのですが、靴が揃っていないからといって指導をしたことはありません。「揃えなさい」「揃ってなかったよ」ということは敢えて言わないようにしています。実は毎朝、各クラスの副担任の先生が揃っていない子どもたちの靴を揃えてあげているんです。やってあげたよということも一切口にしないで、直された子どもがそれに気がつく“気づき力”というのを育むきっかけになればと考えています。とはいえ、取り組みはじめて2年目でまだまだ揃っていない子どもはいますし、それでも子どもたちはいつか気がつくからと先生方には伝えています。

単に整理整頓というだけでなく、緊急時の安全確認にもつながる
単に整理整頓というだけでなく、緊急時の安全確認にもつながる

適切な指導によって4年ぶりに復活した“円陣校歌”

――「校歌を大切にしっかり歌う」に込められた思いは?

本校では60周年を迎えたときに、体育祭で全校生徒が円を組んで肩を組みながら校歌を歌う“円陣校歌”という取り組みがはじまったと聞いています。声高らかに元気良く歌うのは良かったのですが、いつしか怒鳴ったりがなり立てるような本来あるべき校歌の歌い方とは変わってしまったようで、今から4年前に円陣校歌を無くしてしまったそうです。しかし私が感じたのは、先生方の指導によって変えられるという可能性で、学校経営の柱のひとつに掲げて昨年度の体育祭で“円陣校歌”を復活させました。4年という歳月が過ぎ“円陣校歌”を見たことがない子どもたちにとっては未知のものでしたが、音楽の先生や体育委員の活躍により素晴らしい校歌を見事に歌い上げることができました。

体育祭での「円陣校歌」の様子
体育祭での「円陣校歌」の様子

また今年度の体育祭では70周年の記念事業の一環として、学校独自で考案した“常中体操(ときちゅうたいそう)”というのを披露しました。昨年度から体育科の先生方にお願いしていたのですが、ストレッチから筋力トレーニングまで運動の要素をすべて加味した約5分間の集団体操として構成されたものです。およそ920名の子どもたちが生き生きと楽しく体操する光景を見た保護者からは、「おーっ!」と歓声が上がるほどで、子どもたちにとってまたひとつ常中の思い出が増えたと思います。

常中体操(ときちゅうたいそう)
常中体操(ときちゅうたいそう)

学校教育に高い関心を持つご家庭、地域との関わり

――保護者や地域との関わりについても教えてください。

体育祭など学校行事に参加する保護者や地域の皆さまの積極的な関わり方もそうですが、さいたま市には「土曜公開授業」という取り組みがあり、保護者ならびに地域の方の来校者数は生徒数と同じおよそ1,000人にのぼります。保護者や地域の方に広く学校の授業や取り組みを知っていただく機会として行っているのですが、その数からも分かる通り、学校教育に高い関心を持つご家庭が多い地域であり、先生方の授業にもおのずと注目が集まります。市内でも有数の進学校として知られ、子どもたちの学力レベルも高い分、先生方もかなり高い意識をもって教材の研究に取り組んでおられると思います。
また本校にはPTAのほかに市内でも数少ない卒業生が運営する後援会組織があり、70周年の記念式典もPTAの役員の皆さまと一緒になって、いろいろな場面でお手伝いいただきました。

卒業生が運営する後援会組織の協力の様子が随所に見られる
卒業生が運営する後援会組織の協力の様子が随所に見られる

地域とのつながりが分かるエピソードは他にも、「俊英太鼓」という有志で活動する30名前後の和太鼓のチームがあり、本校の伝統として地域の方に関わっていただきながら取り組んでいます。ひとつの太鼓を3人がかりで打つのが特徴ですが、自治会のお祭りや7月の「浦和まつり」にも毎年出演して見事な演奏を披露しています。また今年は「浦和ロイヤルパインズホテル」から要請があって、夏まつりイベントに参加させてもらったり、「さいたま市文化センター」で執り行われた70周年の記念式典でも非常に素晴らしい演奏を披露してくれました。
地域とのつながりは他にも、今年度はじめて学校として地域のクリーン活動に参加しました。浦和区は11月の第2土曜日が地域のクリーン活動の日になっているのですが、これまで区内の小中学生はほとんど参加していなかったそうです。本校も土曜授業の日に当たっていたため地域の方と一緒に活動することはできなかったのですが、登校する途中で通学路のゴミ拾いをするかたちで地域の取り組みに参加しました。自転車通学の子どもたちには自宅の近所だけでも良いよと伝えておいたのですが、熱心に取り組んでくれたおかげでかなりの量のゴミが集まりました。地域の方もそうした子どもたちの取り組みを見てくださっていたようで、「常中の子がこんなこともやってくれるんだ」とコメントもいただきました。

有志で活動する「俊英太鼓」
有志で活動する「俊英太鼓」

小6を対象にしたテストを作成し、中学校の先生が採点・分析

――小中一貫教育に関する取り組みついてもお聞かせください。

さいたま市では平成26年度より「小・中一貫教育」に向けた取り組みを行っていますが、本校では中学3年生を担当する先生が小学6年生向けのテストを作成し、小学校の先生と課題を共有するようにしています。国語と算数、理科、社会の4教科でテストを実施して、採点も中学校の先生が行うことによって6年生のチカラが見えてくるというものです。さいたま市には「さいたま市学力テスト」という共通の学力テストもあるのですが、採点は業者にお任せしているので点数だけは把握できるものの、実際にどういうチカラが身についていて、どういうチカラが身についていないかは見えにくかった。そこで、中学校の先生が採点し回答の傾向を分析したうえで、その結果を小学校の先生にお返しするようにしています。先生同士の合同研修会は年に2~3回実施しているのですが、その4教科についてはテストの結果をふまえて研修を深めていくというカタチをとっているので、小学校の段階から系統的な教え方をやっていきましょうという意識にもつながっていると思います。

授業風景
授業風景

学校の総合力を試す駅伝で大躍進、2017(平成29)年度は市の大会で優勝

――部活動やその他の活動についても教えてください。

今年度は陸上部の男子がリレーで関東大会に出場し、水泳部は埼玉県の新人体育大会で総合優勝、硬式テニスも男女ともに優秀な成績を修めました。文化面でも吹奏楽部、美術部が金賞を、ポスタコンクールでも文部科学大臣賞に輝くなど、子どもたちの活躍の場は多岐に渡ります。

なかでも私は学校の総合力を試す種目として駅伝に注目しています。前任校でも県で優勝して全国大会にも出場したのですが、駅伝が強くなると学校は変わるんです。私が着任する前年、常中は市内で57校中32位でした。昨年4月に着任した時に体育科の先生に「駅伝、頑張ろうよ!」「とにかく県大会に行こう」と話をしていたのですが、その年に市内で7位に入賞し県大会に出ることになりました。同調してくれていた先生方も、保護者や地域の方にとっても予想だにしない結果だったと思います。そして「今年が駅伝元年だから、3年後には優勝しよう」と子どもたちに伝えていたら、2年目の今年、なんと市の大会で優勝してしまったんです。地域の方からも「駅伝優勝したんだってね、すごいね!」とお言葉をいただきました。駅伝を頑張ると学校・地域全体の雰囲気も盛り上がると感じます。

平成29年度に獲得した駅伝の優勝旗
平成29年度に獲得した駅伝の優勝旗

選手になれない子どもに注目して、チーム力を高める取り組みを評価

――わずかな短期間で優勝できるチームにまで育てあげたのは?

駅伝は当然練習を長くすればそれだけチカラがつくんですが、でもそれだけではなくて、選手になれなくても練習に参加して選手のサポートや後輩の育成をしてくれる子どもたちの存在も重要です。練習を重ねていくと子どもたちのなかでもある程度お互いの実力というのは薄々分かってきて、3年生で練習に参加していても選手になれない子どもたちも実際にはいるわけです。私はその子どもたちに注目し、どんどん評価するようにしています。
“常盤感動賞”という賞状を私が作成して、朝礼で手渡すんです。そうすると、「もしかしたら選手になれないかもしれない…」と不安になった2年生が3年生になっても参加してくれるようになる。すると、3年生がいることによってチーム力が高まり、1、2年生のサポートにもしっかり取り組んでくれるようになる。私は常中がもっともっと強くなると信じています。

特別なことではなく日々の良い行いを讃える“常盤感動賞”

「常盤感動賞」の賞状を手に
「常盤感動賞」の賞状を手に

――“常盤感動賞”についてもう少し詳しくお聞かせください。

“常盤感動賞”は私が着任してからはじめたことなのですが、これまで22名の子どもたちに手渡しました。はじめはサッカー部のゴールキーパーの子でした。彼は補欠として試合に臨んでいました。顧問の2人と私がパイプ椅子に座って観戦していたときに、たまたま選手の汗が椅子に飛び散ってしまったのを見てその子が雑巾でさっと拭いてくれたことがあったんです。その後、その子にも顧問にも内緒にして朝礼で「これこれこういうことがあったので、私から感動賞を贈ります!」と、突然その子に賞状を渡したら、「えっ!」とその子もびっくりした様子でしたが、顧問や学年の先生から聞いたところによると、その子の日々の様子が変わったと。感動賞は決して特別なことを取り上げるのではなく、たまたま道路で困っているお年寄りがいてお手伝いをしてあげたということでも良くて、常中にはそういう子どもたちがたくさんいるんです。最近は先生方のほうからも「感動賞を出してあげてください!」と話が持ち上がるようになり、見てもらえているという実感とともに賞状を受け取った子どもたちの様子に変化が見られます。だからこそ私たちは子どもたちの様子を日頃からよく見ていてあげないといけないと思いますし、目立つ子は見えるけれど、目立つ子のそばにいる子は見えないことが多いので、その見えない部分をどう見るかといったことも大切にしています。

さいたま市立常盤中学校 校長
さいたま市立常盤中学校 校長

さいたま市立常盤中学校

校長 山下誠二先生
所在地:埼玉県さいたま市浦和区針ヶ谷4-1-9
URL:http://tokiwa-j.saitama-city.ed.jp
※この情報は2017(平成29)年11月時点のものです。