埼玉高速鉄道株式会社 大川美樹さん インタビュー

鉄道会社として地域と関わる「埼玉高速鉄道株式会社」の取り組み

お話しを伺った大川美樹さん
お話しを伺った大川美樹さん

浦和美園駅の構内に本社をもつ「埼玉高速鉄道株式会社」は、「SR」と呼ばれ親しまれている、「埼玉高速鉄道線」を運営している鉄道事業者だ。高速と名前が付いているが、各駅停車の一般路線であり、東京メトロ南北線と直通運転を行っているため、沿線各駅は都心へ通勤する人々のベッドタウンとなっている。

沿線には合計7つの駅を持っているが、路線の大半が地下にあるため、浦和美園駅以外の駅はすべて地下駅となっている。地上には出入口とバスロータリーがあり、駅の周りがすぐに住宅地となっているという点が、SR沿線で共通して見られる特徴だ。

これらの駅周辺には20年以内に引っ越してきたという新住民が多いため、SRでは住民同士が「つながる」ための機会提供にも力を尽くしているという。今回はSRで「地域連携」の部分を担っている業務推進課で、地元のママさんたちとの信頼関係も厚いという、大川美樹さんを訪ね、沿線で行われている地域交流事業と、「川口元郷」駅周辺の地区の話題について、お話を聞いた。

――そもそも、「埼玉高速鉄道線」とはどのような路線なのでしょうか?

大川さん:埼玉高速鉄道線は2021年でちょうど開業20周年を迎える鉄道で、浦和美園に「さいたまスタジアム2002」ができることが決まった時に、第三セクター(地方公共団体と民間が合同で経営する企業)の会社として作られました。会社ができたのは1992年、路線の開業は2002年になります。当初は2006年の開業予定だったのですが、ワールドカップに合わせて2002年に開業が早められたという経緯があります。

路線については、浦和美園から赤羽岩淵までの合計8駅の区間になっていますが、赤羽岩淵駅はメトロさんとの共同の駅なので、当社が管理をしている駅は川口元郷までの7駅となっています。近年については、おかげさまで、どんどん乗降客も増えているという鉄道です。

路線の特徴としては、開業当時からホームドアが付いているため人身事故が無く、また、地下を主に走りますので、天候にもあまり左右されず、定時運行率がとても高い鉄道ということで、通勤通学で当社をお使いになられている皆さんから評価をいただいています。また、「高速鉄道」と付いていますが、すべての電車が各駅停車の運行となっています。

埼玉高速鉄道線の車両
埼玉高速鉄道線の車両

――将来的に、浦和美園駅から先へ延伸する予定があると聞きました。その点はいかがですか?

大川さん:延伸については、将来的に岩槻まで延伸するという計画はありますが、これは検討の段階で、当社が独自に判断できることではないので、さいたま市が中心となって、県やほかの関係の皆さんと調整して決めているところです。ですので、当社からは何とも言えないのですが、延伸が決まって当社がやるべき役割があれば、積極的に取り組んでいきたいと考えています。

――SRを利用している方には、どのような方が多い印象ですか?

大川さん:都内に通っている方が大半だと思います。南北線の沿線の都心部、たとえば永田町、四谷、東大前などの駅周辺にお勤めの方が多いようです。官庁で働いていたり、公務員だったり、という方が割合的には多い印象です。

そういった方が、南北線沿線で家を探された時に、北区エリアを通り過ぎて、もう少し広くて環境のいいエリアということで、SR沿線を選んでいただいているのかな、と思います。川口元郷に限って言えば、ここは本当に都心に近いところですので、見ている方向は完全に東京の都心方面だと思います。

誰にでも利用しやすく。

――新しい路線ということで、ホームドア以外にもいろいろなユニバーサルデザインが施されていると聞きましたが、どんな特徴があるのでしょうか。

大川さん:もちろん、ホームドアはいろんな方にとって優しい設備ですし、ホームがすべて直線になっているので、電車とホームの間に隙間がほとんどなくて、ベビーカーでの乗り降りも安心していただけると思います。

それから、それぞれの駅には「ステーションカラー」ということで、7色の色を設定していまして、字が読めないというお子さんなどでも、「何色の駅で降りようね」と言えばわかるようになっています。

お子さん向けのサービスだと、運転士さんが子どもたちに会った時に「電車カード」というカードを差し上げることをしていて、これも、子どもたちはすごく喜んでくれています。

川口元郷駅内の様子
川口元郷駅内の様子

――割引きっぷが大人気で、当初は期間限定発売だったものを、通年販売にしたと聞きました。どんな内容なのでしょうか?

大川さん:ひとつは、「シネマきっぷ」という、これはイオンさんと提携して作っているきっぷですが、映画鑑賞と、「浦和美園」駅までの往復乗車券と、ポップコーンとドリンクが全部セットになって、お得な値段になっています。このうち運賃の部分は、大人が3割引き、学生さんは5割引きになっていますので、すごく安く感じられると思います。

もうひとつは、「SR東京メトロパス」というきっぷです。これはメトロ区間の1日乗り放題と、うちの乗車券が3割引きでセットになっている周遊きっぷで、都内に出られる場合は断然お得になりますから、使われている方は非常に多いですね。

――沿線には若いファミリー層の住民も増えていて、地元の方を巻き込んだイベントや、親子向けのイベントなども企画されていると聞きました。全線で開催されているもの、川口元郷駅に限定したものについて、それぞれ教えてください。

大川さん:全駅で同時開催しているイベントということでは、「セブンフェスタ」というものがありまして、これは、それぞれの地域に、それぞれ盛り上げている企業さん、団体さんなどがいらっしゃいますので、そういう方たちをつないで、7駅全部でそれぞれ企画を練って、同時にイベントを開催していただくというものです。各駅で内容はまったく違っていますから、回っていただくことで、より楽しめるようなイベントになっています。

こちらは2年前から始めたもので、最初の年は12月に開催して、それがちょっと寒いという声があったので、昨年は10月に計画をしたのですが、台風が直撃して中止になってしまいまして…。実際にはまだ1回しか開催できていませんが、今後も継続していく計画です。

――各駅で降りて、いろいろなイベントを巡るんですね。ふだん使わない駅で降りるのは、すごく新鮮に感じる方も多かったのでは?

大川さん:そうですよね、隣の駅って意外と降りないですから、このイベントをきっかけに初めてほかの駅で降りてみて、改めて、新しい魅力を発見していただけたらと思っています。一方で、それぞれの地域の企業さんや団体さんが、隣の駅、さらに隣の駅とも手をつないで、仲良くなっていってもらえればな、という思いもあります。

地域柄を活かした沿線との連携

セブンフェスタの様子
セブンフェスタの様子

――「セブンフェスタ」では、具体的に各駅でどのような企画がされたのでしょうか?

大川さん:「川口元郷」駅について、(中止になった)今回は、新鮮なお野菜の販売をする予定でした。その前の年には、地域に「大泉工場」(株式会社大泉工場)さんというところがあるので、「川口元郷」駅の構内と大泉工場さんの敷地を使って、「ファーマーズマーケット川口」という、地元の野菜や食べ物を販売したり、クラフトのワークショップを開催したり、という企画をやっていただきました。

ほかの駅でも、それぞれの地域柄が出るような企画を考えていただいて、たとえば「新井宿」駅では、「かみね野菜」がすごく有名なので、お野菜の販売が中心になっていましたし、「南鳩ケ谷」駅はハンドメイドの作家さんたちが多い地域なので、そういうお母さんたちが、ワークショップを開いてくださったり。そんな感じで、駅によって全然違う内容になっていました。来年はまた違った内容になっていくと思います。

あと、普段からすべての駅でやっていることをご紹介させていただくと、それぞれの駅が、それぞれすごく工夫をして、あたたかく迎えたり、お見送りをしていただけるような雰囲気を作れるように、趣向を凝らして装飾などをしていただいていますので、こういうところも是非、注目して頂けると嬉しいです。

 

ファーマーズマーケット川口の様子
ファーマーズマーケット川口の様子

――ほかにも、沿線地域の人々との連携事業があれば教えてください。

大川さん:本社がある浦和美園については、「美園祭り」というイベントを主催させていただいていまして、これは昨年で5回目の開催になりました。こちらは、地域の小中学校、高校、大学、企業、自治会の方など、いろんな方に集まっていただいて、ハロウィンと合わせる形で、10月ごろに開催しているもので、美園だけではなくてかなり広い範囲から、毎年4万人くらいの来場者があるという、大きなイベントになっています。

あと、これは私が個人的に、地域と連携させていただいた初めてのお仕事だったんですが、沿線の「さんぽマップ」というものをそれぞれの駅で作っていまして、各駅で無料で配布させていただいています。

無料で配布しているさんぽマップ
無料で配布しているさんぽマップ

その時にいろいろ歩き回って、いろんな人たちと知り合うことができたので、セブンフェスタのような企画ができたのも、このマップがあったからだと思っています。実際に各駅の周りを歩き回って作ったものなので、ぜひ手に取ってみていただければと思います。

――イラストもかわいくて、すごく素敵なマップですね! 川口元郷のマップに載っている中で、とくに印象的だった場所を教えてください。

イラスト付きでわかりやすく工夫されている
イラスト付きでわかりやすく工夫されている

大川さん:載っているところは全部魅力的なんですけれど、さっきもご紹介した「大泉工場」さんには、とってもきれいなお庭があって、美味しいレストランもありますから、ぜひ行っていただきたいですね。あとは、有名なところなんですが、「田中家住宅」さんもかなりおすすめですし、駅からすぐのところにある「錫杖寺」(しゃくじょうじ)さんも、大奥の総取締役だった瀧山(たきやま)さんという方のお墓があるところで、昔の籠(かご)とお墓が見学できます。

あと、マイナーだけど個人的におすすめしたいのは、まず、氷川神社(元郷氷川神社)さんですね。ここの御朱印帳がすっごくかわいいんですよ。それから「フタバ屋本店」というパン屋さんも、すごく小さなお店なんですけれど、ずっと親子でパンを作ってやっていらっしゃる店で、すごくお話が好きな方々なので、おしゃべりもすっごく楽しくて。ぜひ行ってみてください。あと、随泉寺というお寺の裏に「ききわけ地蔵」というお地蔵さんがあって、私はここの近くを通った時には、必ずこのお地蔵さんの頭を撫でに行っています。ネットからでもマップを見られますので、ぜひ、これを見ながら元郷を散策してみてください。

「川口元郷」駅周辺の個性とこれから

――「川口元郷」駅の周辺について、どんな特徴や雰囲気のある地域だとお感じですか?

大川さん:川口元郷は、昔はすごく鋳物(いもの)が有名な地域だったと聞いていますが、実は、今大きなマンションがたくさん建っている場所のほとんどが、鋳物工場の跡地だったと知って、私はそれがすごく印象に残っています。

地域にお住まいの方々も、昔からいらっしゃる方もいて、昔ながらの小さなお店さんなども結構あるんですが、一方で、新しく引っ越してきた方もたくさんいらっしゃって、そこで会ったママさんたちにお話を聞いても、「子どもたちが将来、ここに住んでいてよかったな、と思える街にしたい」という思いを持っている、元気なママさんがすごく多い地域だな、という印象があります。

お母さんたちがみんなで協力して、いい教育の場、遊びの場、楽しむ場というのを作っていらっしゃって、みんなが新参者なので、新しく来られた方もすぐに打ち解けて、すごく仲良くやられているな、というのが印象的でした。

あと、街がすごくきれいなんですね。高層ビルを筆頭に、新しくてきれいなマンションも建ち、公園もすごくきれいで、そんな中に、氷川神社さんのように地域密着の神社さんもあったりして、とてもほのぼのした、あったかい街だな、と思っています。

――今後、川口元郷がどういう街になっていけばいいな、と思われますか?

大川さん:新しい方同士の仲がとってもいい地域なんですが、古くから住んでいる方と新しい方の交流については、まだちょっと少ないのかな、と思っているので、そういう方ともお互いに知り合いになって、交流ができるような地域になっていったら、もっともっと、住みやすい街になっていくのかな、と思っています。いろいろなイベントを、そのステップとして活用していただければいいな、と思っています。例えばお年寄りの方から、若い方が声をかけられるような、そういう街になっていったら素敵ですね。

――川口元郷エリアの魅力について、一言お願いします!

大川さん:やっぱり、川口駅を含めて、川口元郷の地域というのは、すごく生活しやすい場所だと思っています。都心からもすごく近いですし、新しい施設やお店もたくさんある一方で、「鋳物の街川口」という古くからの魅力もあって、新旧がすごくいい感じに融合している街だと思います。そういう、新旧が一緒にある街という特徴を生かしながら、私たちも鉄道事業者として、皆さんの橋渡しをできたらと思っています。

大川美樹さん
大川美樹さん

埼玉高速鉄道株式会社

総務部 事業推進課 
所在地 :さいたま市緑区美園4-12
電話番号:
URL:埼玉高速鉄道:https://www.s-rail.co.jp/
川口元郷・南鳩ヶ谷さんぽマップ:https://www.s-rail.co.jp/news/2017/pr20170323-kawaguchimotogo-minamihatogaya-sampo-map.php
セブンフェスタ2018:https://www.s-rail.co.jp/event/2019/7festa-2019.php
セブンフェスタ2019:https://www.s-rail.co.jp/event/2019/7festa-2019.php
※この情報は2020(令和2)年3月時点のものです。