生徒の力を発揮させてくれる周囲の人に感謝し、自分の力をみんなのために役立てる「富士見市立水谷中学校」
水谷東地区にある「富士見市立水谷中学校」は、東武東上線「みずほ台」駅から徒歩約30分。見通しの良い場所にあり、赤茶色の校舎が遠くからよく見える。周辺では宅地開発が進み、生徒数の増加が見込まれている。齊藤宏校長先生に、同校が推進する教育方針やめざす生徒像、そして地域の魅力についてお話を伺った。
「行事を通して生徒も教職員も成長する」という伝統が根付く「富士見市立水谷中学校」
――まずは「富士見市立水谷中学校」の歴史や概要についてお聞かせください。
齊藤校長先生:1983(昭和58)年に開校しました。校舎の工事が間に合わなかったのか、最初は近くの本郷中学校の敷地内に開設され、2学期の9月から現在の場所での学校生活がスタートしたようです。
2025(令和7)年2月現在、各学年3クラスあり、生徒数は308人。はばたき学級という特別支援学級2クラスを合わせて、計11クラスの構成です。最も生徒数が多かったのは1986(昭和61)年度の18クラス727人で、最も少なかったときは2011(平成23)年度の6学級195人となります。
水谷地区は農地だったところがどんどん宅地に変わっていて、水谷地区にある「富士見市立水谷小学校」の児童数も増えています。本校は水谷東地区にありますが、生徒の多くは水谷地区から通っています。
――「富士見市立水谷中学校」の教育方針と、学校の魅力を教えてください。
齊藤校長先生:本校では2009(平成21)年度に、第9代校長で、現在川越市の教育長を務めている新保校長先生が定めた「水中魂 感動は挑戦と思いやりから」という標語がひとつの伝統として息づいています。
また、私が定めた「元気 思考 感謝 夢に向かい!自分を信じ、己で進め!」という学校教育目標では、特に「元気、思考、感謝」の部分を手話で表現し、子どもたちに周知しています。短い言葉で覚えやすく、手話も簡単なため、意識付けとして取り入れています。朝会などの集会時には、子どもたち全員に手話で表現してもらっています。
齊藤校長先生:そして本校の魅力は、「行事を通して生徒も教職員も成長しよう」という伝統ですね。例えば体育祭でも、みんなが自分の良さを発揮して活躍できるように工夫しています。
また、さまざまな行事を通じて、自分の力を周囲のために生かそうとする気持ちの大切さを教えています。「自分が力を発揮する」のではなく、「自分の力を周りが発揮させてくれる」と認識し、そのことに感謝しようと伝えています。個別最適な学びなど「個」を大事にする流れの中、少し時代に逆行する考えかもしれませんが、やはり学校は集団生活を学ぶ場でもあります。生きていく上で人間関係は外せませんから、さまざまな人と助け合い、その大切さを学びながら成長してほしいと思います。
――通われている子どもたちや、ご家庭はどんな方々が多いでしょうか。
齊藤校長先生:子どもたちの様子を見ていると、親子関係が良好なように感じます。明るく素直で、毎朝元気に挨拶をしてくれて、本当に気持ちがいいなと思います。
――子どもたちの進学状況や、学習塾への通塾割合について教えてください。
齊藤校長先生:全校生徒の7割ほどは塾に通っているようです。学年別に見ればやはり3年生の通塾割合が多いと思います。それぞれ自分の目指す学校に進学するために勉強を頑張っている印象です。
防災意識の高い水谷地区・水谷東地区は、防災訓練に参加する子どもたちが多い
――近隣の小学校などと、連携して行う取り組みはありますか。
齊藤校長先生:今日は「富士見市立水谷小学校」の特別支援学級の子どもたちと、本校の特別支援学級の子どもたちで交流会を行いました。また、隣の「富士見市立水谷東小学校」の子どもたちが、本校の合唱祭の練習風景を見学にきたり、卒業シーズンには、6年生が卒業式の練習を見学したりします。先輩である中学生の姿を見ると、意識が随分変わるようです。
――地域のみなさんに、授業などでご協力いただくことはありますか。
齊藤校長先生:毎年2年生は3日間にわたる職場体験学習があり、ラーメン屋、動物病院、畳屋、お寺など富士見市のいろんな企業を訪問し、さまざまな職業を体験します。身近にさまざまな進路があることを知ると同時に、地域の人々と触れ合う機会にもなっています。
また、この辺りにはさまざまな地域団体があります。例えば、水谷東地区と水谷地区の町会長代表、「みずたに幼稚園」の園長などが参加する「学校運営支援者協議会」、他にも「富士見市青少年育成市民会議」の水谷支部、「水谷東地域連絡会議」「水谷地域安心安全ネットワーク会議」などがあり、「地域の子どもたちをみんなで守り、応援しよう」という意識を強く感じます。
齊藤校長先生:特に水谷東地区は過去に何度か水害に見舞われ、その困難をともに乗り越えてきた歴史があり、地域住民の結束が強いと感じます。防災訓練が盛んで、隣接する志木市の柏町との合同防災訓練もあります。本校の生徒もよく参加していて、鍋の火の消し方や毛布を使った簡易的な担架の作り方、人命救助の方法などを学んでいます。
この地域には昔から「頼りにしてます中学生!頼りになります中学生!」という標語があり、中学生が地域のために力を貸す意識が根付いています。大人は働きに出ていて昼間は街にいませんから、災害時には中学生がお年寄りや小さな子の避難や救助を手伝うわけです。要介護の方を対象とした防災訓練では、体の不自由な方を中学生がリヤカーに載せて運んだりしています。地域の清掃活動に参加する機会もありますね。
子どもたちに向ける地域住民のまなざしが温かい、水谷地区・水谷東地区
――学校から見て、周辺地域の子育て環境はいかがでしょうか。また、おすすめスポットなどがあれば併せて教えてください。
齊藤校長先生:一番の魅力は自然が豊かなことですね。雑木林があちこちにあり、柳瀬川や新河岸川が流れていて、子どもたちがのびのびと成長できる環境だと思います。
特に私が好きな施設は「難波田城公園(資料館)」です。古代蓮や古民家があり、秋の夕暮れ時や冬場は特に風情が感じられます。「水子貝塚公園」もいいところですよ。夏には「星空シアター」という野外での映画上映を行っています。
齊藤校長先生:また、富士見市だけあって、本校からも富士山がキレイに見えます。お年寄りを中心に、地域の人々が小中学生を温かく見守る優しさを持っていることも、この地域の魅力です。
――最後にこれからこのエリアに住みたいと考えている方々へ、一言メッセージをお願いいたします。
齊藤校長先生:これは私見ですが、水谷東地区も水谷地区も、家庭、地域、学校が一緒になって子どもを育てられる地域だと思います。学校行事等では、保護者や地域の方々に大変お力添えいただいております。
また、この地域には「水谷公民館」と「水谷東公民館」と2つ公民館があります。移り住んで来られる若い人たちにもこうした場に足を運んでいただき、地域の人と交流を深めていただければ、さらに良い環境になっていくと思います。

富士見市立水谷中学校
齊藤宏校長先生
所在地:埼玉県富士見市大字水子3117
電話番号:049-254-5335
FAX:049-255-1201
URL:https://www.city.fujimi.saitama.jp/madoguchi_shisetsu/06school/chugakko/2010-0512-2027-137.html
※この情報は2025(令和7)年2月時点のものです。