子どもたち一人ひとりの個性が輝く、インクルーシブな子育て支援施設「パレットやぎさき」

東武アーバンパークライン「八木崎」駅から徒歩1分。「パレットやぎさき」は、児童発達支援センターと保育所の機能を持つ県内初の複合型子育て支援施設だ。開設から2年余り、「八木埼保育所」の所長である板橋とみ子さん、「ふじ学園」の管理者であり児童発達支援管理責任者を務める高野香里さん、運営元の株式会社コマームの荒井直美さんに、施設や取り組み内容、春日部エリアについてお話を伺った。

板橋とみ子さん(左)と高野香里さん(右)
板橋とみ子さん(左)と高野香里さん(右)

子ども同士が自然に交流できる、インクルーシブな施設

――「パレットやぎさき」の施設概要、複合型子育て支援施設としての特徴を教えてください。

板橋さん:障がいのある子どもたちへの療育支援の充実と、保育所の待機児童の解消を図るため、一体的に整備された市の複合施設です。2021(令和3)年4月にオープンしました。施設内には定員60名の児童発達支援センター「ふじ学園」と定員120名の「八木崎保育所」があり、一時預かりと病児保育も行っています。「ふじ学園」には児童発達支援の通所支援と療育支援及び放課後等デイサービスがあり、臨床心理士、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士が常駐していて、4つの専門療育が受けられます。1階は通所、2階は外来のような感じで使われることが多いです。

「パレットやぎさき」外観
「パレットやぎさき」外観

荒井さん:株式会社コマームが指定管理者として運営しています。障がいのある子もない子も一緒に支援を受けられる、インクルーシブな施設である点が特色です。公募にて選ばれた「パレットやぎさき」という愛称には、子どもたちそれぞれの個性が輝けるように、という想いが込められています。普段過ごす部屋こそ違いますが、支援センターと保育所は同じ建物内にあって入口や園庭は共通なので、子どもたちは自然な交流ができています。いろいろな人がいるということを、幼いうちから自然に知ることができる。それが大きなメリットだと思います。

入ると広いエントランスがあり、目の前に中庭が見える
入ると広いエントランスがあり、目の前に中庭が見える

――日ごろ利用しているお子さんや保護者の方の、感想・要望などお聞かせください。

板橋さん:職員が明るく元気ということは、よく言っていただきます。「毎日元気に挨拶してくれてうれしい」と。アンケートでもその点は特に高く評価いただいています。要望としては、「中に入って子どもの様子を見たい」という声が多いです。コロナ禍の中で、これまではイベント時も屋内開催の場合は基本参観をNGにしていたことが理由の1つだと思われます。今後は保護者の皆さんも参加もできるようになると思いますし、地域の方々とふれあえるイベントもたくさん実施したいと思っています。

コロナ禍が明けた今、地域との交流を本格化していきたい

水遊びもできるテラス
水遊びもできるテラス

――地域の子どもたちとの交流や世代間交流などが実現できるよう、取り組まれていることや今後進めていきたいことなどはありますか?

板橋さん:開催に向けて準備しているイベントがいくつかあります。具体的には、夏まつりや秋のキッズフェスティバルなどですね。去年も直前まで準備を進めていたのですが、コロナ感染の拡大のため結局開催できなかったんです。

両方とも地域の皆さんとともに楽しめるイベントを目指していて、目の前にある「埼玉県立春日部高校」のボランティア部や近隣の町会にお声がけをしています。高校には保育を学んでいる生徒さんもいらっしゃるようで、ボランティア部の顧問の先生からは「イベントだけではなく、ぜひ保育の様子も見学させてください」と言っていただきましたし、町会長さんもすごく喜んでくださいました。子どもたちもみなさんとふれあえることを喜ぶと思います。

理学療法室
理学療法室

板橋さん:また、春日部市の公立保育所では「地域交流会」というイベントを行っており、地域の未就園児とその保護者の方を対象にした保育所体験で、この施設では月に2回、午前中に実施しています。ぜひ遊びに来て、子どもたちとの交流を楽しんでいただきたいです。

木のぬくもりが感じられる、2階のエントランスホール
木のぬくもりが感じられる、2階のエントランスホール

荒井さん:今年の4月からは、「ふじ学園」の遊戯室を使い、全国的に行われている『おもちゃ図書館』を開催し、楽しんでいただいています。親子で来ていただき、子どもたちにたくさんのおもちゃの中から好きなものを選んで自由に遊べる場所を提供する取り組みです。春日部ではボランティアグループ「うさぎとかめ」が主催し、私たちは場所の提供と運営サポートをしています。

障がいのある子、発達面が気になるお子さんを対象としています。他のご家族どうしとの交流がしやすくなってきました。今はまだ、「ふじ学園」に通っている子たちとご家族の参加が多いのですが、地域の方々にももっと来ていただき、より地域に開かれた場所にして行きたいです。また、この取り組みを通して、地域のボランティアが養成されることも大事だと考えています。

2階から見た中庭
2階から見た中庭

――施設を運営する上で気を付けている点や、利用者と関わる中で大切にしていることがありましたら教えてください。

高野さん:当たり前のことではありますが、子どもたちの安全を第一に運営しています。「ふじ学園」は通園バスを2台運行しています。交通安全の徹底はもとより、昇降時には、子供たちへの声掛けを行うなど、事故のないよう細心の注意を払っています。保育の面でも、保護者の方が安心して預けられるよう、常に子どもたちの安全を考えて行動しています。その上で、子どもたちに楽しく過ごしてもらうことが、管理者として一番の喜びです。

私は「ふじ学園」で児発管(児童発達支援管理責任者)として障がいのあるお子さんをみているのですが、一人ひとりの気持ちに寄り添うことを心がけています。子どもが泣いたり暴れたりしても、「なんでそんなことするの?」とか「ダメだよ」などと言うのではなく、子どもの気持ちを汲んで「暴れたくなるときもあるよね」など声をかけて、気持ちを受け止めるようにしています。時間になっても帰るのを嫌がる様子などを見ると、ここで過ごす時間が好きなんだと感じられてうれしく思います。

「ふじ学園」の入り口
「ふじ学園」の入り口

板橋さん:私はただただ子どもたちが可愛くて、ふれあっていると愛おしい気持ちがあふれてきます。その都度、本人に良いところ、可愛いと感じたところを伝えています。そうすると子どもたちはすごく喜んでくれるんですよ。幼児期の愛着関係は重要なので、子どもにかける言葉は大切にしています。保護者の方々に対しては、それぞれの努力や気遣いに共感するよう心がけています。お仕事をしながら子どもを育てて、みなさん本当に大変だと思うので。また、保護者のみなさんに少しでも気軽に声をかけていただけるよう、職員同士も「〇〇先生」ではなく「さん」付けで呼び合っています。

大きな窓から陽光が入る階段付近
大きな窓から陽光が入る階段付近

気軽に遊べる公園が多く、平坦で自転車が快適!山がキレイに見える春日部エリア

――春日部エリアの子育て環境について、感じている良さがあれば教えてください。

高野さん:私は岩槻に住んでいて、二人いる息子はもう成人しているのですが、子育て中は春日部市に大変お世話になりました。公園でもよく遊びましたね。息子たちは体を動かすことが大好きなので、アスレチック遊具で遊べる「内牧公園」が特にお気に入りでした。遊具だけでなく自然も多く、大人がホッとできる場所でもありますね。園内を流れるせせらぎやじゃぶじゃぶ池もあって、水遊びもできますよ。

また、「春日部市第1児童センター エンゼル・ドーム」は、ふじ学園でも、昨年度の3月に子どもたちのお別れ遠足で行かせていただきました。今も子どもたちには人気のスポットですよ。

2階受付前のスペース
2階受付前のスペース

板橋さん:私は川口市に住んでいるのですが、気軽に遊べる公園が多く、恵まれた子育て環境だと思います。子どもたちを散歩に連れて行くとき、各保育士さんが「今日は〇〇公園に行ってきます」と言うんですが、毎回公園の名前が違うんです。ずいぶんいろいろな公園があるんだな、と感心しています。

広くて気持ちがいい「春日部神社」もおすすめのスポットです。また、ショッピングモール「ララガーデン春日部」では子ども向けのイベントが定期的に行われています。「イオンモール春日部」もあり、どちらも子どもが好きそうなお店がいっぱいあるので、親子で楽しめますね。園の子どもたちから「こないだララガーデン行ってきたよ」など聞くことも多いです。

子どもたちも存分に遊べる「ララガーデン春日部」
子どもたちも存分に遊べる「ララガーデン春日部」

――最後に、春日部エリアの魅力をお聞かせください。

荒井さん:まずは豊かな自然環境でしょう。基本的には穏やかな住宅地ですが、すぐ隣に緑地などがあることは春日部の特徴だと思います。次に、埼玉県全体に言えることですが災害が少ないです。そして、このあたりは坂も少ないので自転車での移動がラクですね。高層ビルがないので全体的に見通しが良く、筑波山や富士山が見えるのも気持ちがいいですね。本当に快適で住みよいところだと思います。「春日部」駅の東口にある「ぷらっと春日部」では市の情報を発信していて、遊び場の情報なども入手できますよ。

板橋さん:「大宮」駅からアーバンパークラインで通勤しているのですが、こちらに近づいてくるにつれて風景がのどかになっていき、ホッとします。ちなみに春日部市内だけで駅が8個あり、交通環境もいいと思います。

クレヨンしんちゃんに登場するスーパーマーケットのモデルとも言われる「イトーヨーカドー 春日部店」
クレヨンしんちゃんに登場するスーパーマーケットのモデルとも言われる「イトーヨーカドー 春日部店」

高野さん:一番は『クレヨンしんちゃん』の舞台になっている街、という点でしょう。子どもたちはみんな大好きです。東武スカイツリーライン「春日部」駅の発車メロディも主題歌ですし、「春日部市第1児童センター エンゼル・ドーム」にはしんちゃん像もあります。作品に登場するスーパーマーケット「サトーココノカドー」のモデルとなった「イトーヨーカドー 春日部店」では、以前ロゴのハトをコウモリにするなどして「サトーココノカドー」に寄せた遊び心あるイベントも開催していましたよ。

 

パレットやぎさき

春日部市立八木埼保育所 所長 板橋とみ子さん 
春日部市立ふじ学園 児童発達支援管理責任者 高野香里さん
株式会社コマーム 第1事業部 課長 荒井直美さん
所在地 :埼玉県春日部市粕壁5435-1
電話番号:048-797-5747(八木崎保育所)
電話番号:048-754-4017(ふじ学園)
※この情報は2023(令和5)年5月時点のものです。