地域とともにはぐくむ、心強い学校応援団のいる「春日部市立八木崎小学校」の教育と取り組み/江村恵里子校長先生

校庭に樹木が茂る森があり、自然環境が整う春日部市立八木崎小学校。目指す学校像には「地域とともにはぐくむ」と記され、地域とのつながりの強さがうかがえる。地域の方々で作られる「八木崎サポーターズ(学校応援団)」のキャッチフレーズは、「ちょっとおせっかいはじめませんか」。小学校と地域の人々が自然な形で連携している。そんな八木崎小学校ならではの教育の取り組みを伺うため、江村恵里子校長先生に話を伺った。

「春日部市立八木崎小学校」 江村恵里子校長先生
「春日部市立八木崎小学校」 江村恵里子校長先生

八木崎小だからできる、数々の取り組みとは?

――まず八木崎小学校の概要や歴史についてお聞かせください。

江村校長先生:本校は1972(昭和47)年に、粕壁小学校から分離し、開校しました。当時は教職員数30人、児童数598人、通常学級16学級、特別支援学級(当時は特殊学級)2学級、計18学級でした。その後徐々に児童数が増加し、1982(昭和57)年には1,463人になり、この間3回にわたり、教室増設工事が行われています。

「春日部市立八木崎小学校」正門
「春日部市立八木崎小学校」正門

――現在の生徒数などはいかがでしょうか。

江村校長先生:今年で創立53年になりました。現在は、児童数は668名、通常学級20学級、特別支援学級4学級の計24学級です。卒業生は今年の予定者を合わせると、8,396人になります。卒業生の中には、脳科学者でかすかべ親善大使の茂木健一郎先生(第3回卒業生)がいます。2007(平成19)年に春日部市教育委員会委嘱研究発表会の際に、記念講演をしていただきました。

――学校教育目標「かしこい子 やさしい子 たくましい子」に込められた想いを教えてください。

江村校長先生:学校教育目標「かしこい子 やさしい子 たくましい子」は、知育・徳育・体育の3観点を示し、こどもたちの「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」を育み、夢を与え、学ぶ喜びや人と関わる喜びを味わわせることを大切にした教育目標です。また、保護者、地域の期待と信頼を真摯に受け止め、こどもたちの健やかな成長を実現していくことが私たちの使命であることを深く自覚し、こどもも大人も「八木崎小学校でよかった」「八木崎小学校に通わせてよかった」と思える学校づくりを目指しています。

明るく朗らかな印象の江村校長先生。背後にある名入りの大凧からも、街への想いが伝わる
明るく朗らかな印象の江村校長先生。背後にある名入りの大凧からも、街への想いが伝わる

――八木崎小学校に伺った印象ですが、子どもたちはとても元気ですね。

江村校長先生:人懐っこい子が多いと思います。私はこの学校の校長に就任して2年になるのですが、就任当初は挨拶が少ないことが気になり、まずは元気な挨拶の定着から始めようと、毎朝の挨拶運動を行っています。生活安全委員会の児童たちも月、水、金と週3日正門に立ち、一緒に挨拶するようにしています。2年経ち、挨拶ができる子が増えています。

広い校庭を持つ校舎
広い校庭を持つ校舎

――八木崎小学校ならではの、特色ある教育方針や特徴的な授業など教えてください。

江村校長先生:まずは国語の研究です。自ら学び、思いを豊かに表現するための伝える力を高める国語指導の研究を実施しています。

――具体的にはどのようなことを実施されているのでしょうか。

江村校長先生:2020(令和2)年度から3年に渡り、特に思考力、判断力、表現力などを育成することに注目して研修した結果をもとに、2023(令和5)~2025(令和7)年にかけては「自ら学び、思いを豊かに表現するための伝える力を高める指導の研究」を進めています。

――どのような効果が見られましたか。

江村校長先生:相手意識や目的意識をもたせることで、文章を書く意欲が高まり、内容が充実してきました。また、語彙を増やすために、各学年で楽しみながら言葉への意識を高める活動を続けています。基本の話型をもとに、学年に応じた伝え合いの場を十分確保し実践させていきたいと考えています。

職員室前の張り紙
職員室前の張り紙

――八木崎小学校を取り巻く環境も素晴らしいですね。校庭から続く森も印象的ですね。

江村校長先生:八木崎の森は、1982(昭和57)年に開校10周年を記念して、バザーと廃品回収による収益金をもとに、学校と地域に長く残るものとして造られました。樹木をたくさん植え、時間の経過とともに立派な森に成長することを願ったと聞いています。森は木陰を作り、小鳥が木にとまりさえずる声が聞こえてくる八木崎の森は、こどもたちの遊び場としても活用されています。

校庭から続く八木崎の森
校庭から続く八木崎の森

また、正門近くには、玉青の像があります。1987(昭和62)年に開校15周年を記念して著名な彫刻家斎藤馨氏作のブロンズ像を建立しています。「玉青」の文字は当時の田中昭一校長先生の手によるもので、磨けば益々光り輝く青い玉であるこどもたちが未来に向かって羽ばたいてほしいとの願いが込められています。

正門近くでこども達を見守る「玉青の像」
正門近くでこども達を見守る「玉青の像」

――給食が美味しいとの評判もありますね。

江村校長先生:本市(旧春日部)は、小中学校共に自校給食です。4校の栄養教諭が1グループになり、献立作成していますが、食材はできるだけ国産を選んだり、こんぶやガラでだしをとったり、ハンバーグの成型も手でするなど、手作りにこだわり、給食調理員とともに安全安心な給食を作ってくれています。

また、食育の一環として、給食メニュー人気投票をしたり、家庭科の学習と連携して献立作りを栄養教諭が担任とともに指導しています。また教員の投票により、学級1グループの献立が、実際に給食に出てきます。私もとても楽しみにしています。

6年2組の代表献立「和風カルボナーラ風うどん」
6年2組の代表献立「和風カルボナーラ風うどん」

地域みんなで見守り地域全体で子どもたちを育てる春日部市立八木崎小学校

――地域の皆さんとの取り組みがあればお聞かせください。

江村校長先生:八木崎小学校の学区は、古くからお住いの市民の方も多く、「息子も孫も八木崎小でお世話になった」とおっしゃられる方もたくさんいらっしゃいます。長く八木崎小を見守っていただいていることに心から感謝しています。「ありがとう集会」という会を実施していますが、今年は授業や安全見守り活動などでお世話になった地域、外部指導者の方17団体37名をお招きしました。お忙しい中、ほとんどの方が都合をつけてこどもたちに会いに来てくださり、とても感激しました。こども達からお礼のメッセージを歌のプレゼントをし、感謝の気持ちを伝えるあたたかな会になりました。

ありがとう集会の様子
ありがとう集会の様子

――御校には応援団がいるとお聞きしました。

江村校長先生:「八木崎サポーターズ」という学校応援団がありまして、年間を通して大変お世話になっています。ちょうど10年ほど前に、地域の方32名で発足しました。地域の人で自主的に学校の教育環境の向上に係わりたい方を募集し、いわゆる授業の補佐や講師、トイレ清掃、安全見守りにかかわることからスタートしたと聞いています。

八木崎サポーターズ(学校応援団)のバッチ
八木崎サポーターズ(学校応援団)のバッチ

――それは頼もしい応援団ですね。

江村校長先生:現在は、「ちょっとおせっかいはじめませんか」をキャッチフレーズに、「一人でやるのは難しいからチームでやりましょう」と、コーディネーターの吉田さんは常々言っています。このサポーターズから、緑化活動や登下校の見守り、遠足時の駅までの移動時の安全見守り、家庭科のミシンの授業の補佐、特別支援学級のクラフト教室、書写、特に書道時の補佐など多岐にわたり、支援をしていただいています。

学校運営協議会の様子
学校運営協議会の様子

――5年生による中学校見学など、近隣の「大沼中学校」や「春日部中学校」との連携も盛んにおこなわれていますね。近隣の中学校をはじめ、他の学校などと一緒に行うお取組みがあれば教えてください。

江村校長先生:小中連携は、学力向上の面でも中一ギャップ解消の面でも、有益な取り組みだと考えています。小学生にとって、兄姉が通っている身近な中学校でも、自分たちよりも大人の世界で勉強も難しくなり、しっかりしなければならないところ、と思っているようです。そのため、実際に自分が生活する場所を訪問し、中学校の授業や生活について説明を聞くことで、中学校生活のイメージが付きやすくなります。

「春日部市立大沼中学校」
「春日部市立大沼中学校」

――知らない世界というのは、不安に感じることもありますから。

江村校長先生:いたずらに心配したり、おびえたりする必要がないことを知ってもらいたいと思い、実施しています。これまでは、6年生が市内一斉に行う12月の中学校訪問だけでしたが、昨年より5年生の秋に、訪問させてもらっています。本校は2中学校に進学するため、中学校側の協力のもと、同一日、同一時間帯に実施しています。

帰校したこどもたちは、「中学生の授業に向きあう姿勢がすごかった」「思ったより先生が優しかった」など、初めて見る様子に驚いたり、自分の行動を振り返るきっかけとなったようです。

他にも、春日部中学校吹奏楽部の演奏会、英語担当の先生の授業など、中学校に親しむことができる取り組みを継続しています。

「春日部市立春日部中学校」
「春日部市立春日部中学校」

これから春日部エリアに住まわれる方にメッセージ

――学校から見た周辺エリアの住環境や、おすすめスポットを教えてください。

江村校長先生:八木崎小学校から徒歩3分にあるふじどおりは、春日部市の花である約1kmの藤棚があります。4月から5月にかけて、白、桃色、藤色、濃紫色の藤が美しく咲いています。

ふじどおりの写真
ふじどおりの写真

防災地下神殿として知られる「首都圏外郭放水路」は、4年生の社会科見学で訪れ、毎年その広さに驚いています。また、春日部市には、かすかべフードセレクションというのがあります。おいしそうな食べ物ばかりで、全制覇したいものです(笑)。

「首都圏外郭放水路」の機能・役割を紹介する「地底探検ミュージアム 龍Q館」
「首都圏外郭放水路」の機能・役割を紹介する「地底探検ミュージアム 龍Q館」

――これから春日部市にお住まいになる方々へ、メッセージをお願いいたします。

江村校長先生:春日部市は人があたたかく、まちなかに商業施設も、緑豊かな公園もたくさんある暮らしやすいまちだと思います。毎年5月の3日と5日には、江戸川河川敷で大凧あげ祭り、4日には、春日部マラソン大会など、いろいろな伝統文化やイベントもたくさんあります。子どもも大人も安心して住める街「春日部」。八木崎小の子どもたちも春日部が大好きだと言っています。

2024(令和6)年1月に竣工した「春日部市役所」の新庁舎
2024(令和6)年1月に竣工した「春日部市役所」の新庁舎

江村恵里子校長先生
江村恵里子校長先生

春日部市立八木崎小学校

江村恵里子校長先生
教員時代の担当学科は体育。春日部市小渕小学校教頭、越谷市立桜井小学校校長を経て、2024(令和6)年より春日部市立八木崎小学校校長に着任。
所在地:埼玉県春日部市中央4-1
電話番号:048-754-4433
URL:https://schit.net/kasukabe/esyagisaki/
※この情報は2025(令和7)年2月時点のものです。