越谷市下間久里エリアガイドKOSHIGAYA-SHIMOMAKURI

小中一貫教育で「南っ子」を育成する公立小学校

あきらめず、ねばり強く取り組む姿勢がより良い学校の雰囲気をつくる「越谷市立桜井南小学校」のいま

越谷市内を南北に走る東武伊勢崎線「大袋」駅から歩くこと約15分。22学級およそ550名の児童が集う「越谷市立桜井南小学校」は、開校43年目を迎える落ち着いた校風が印象的な学校だ。下間久里の獅子舞や越谷市の伝統産業として知られるだるまなど地域に根ざした活動がある一方、ICTを活用した授業や「学校かくれんぼ」と称した前例のない取り組みなど、多彩な教育活動が行われている。

今回は2022(令和4)年度に着任した秋山弘幸校長先生を訪ね、「越谷市立桜井南小学校」の概要や特色ある取り組み、「学校かくれんぼ」が行われることになったきっかけなどについてもお話を伺った。

お話を伺った、秋山弘幸校長先生
お話を伺った、秋山弘幸校長先生

地域とともに育て上げてきた落ち着いた雰囲気が魅力

――まず「桜井南小学校」の歴史や概要についてお聞かせください。

秋山先生:越谷市立桜井南小学校」は1981(昭和56)年の開校で43年目を迎えます。沿革によると近隣にある桜井小学校、大沢北小学校、弥坂小学校に通う子どもたちの数が増えてきたため、本校が新設されたと記載があります。

2024(令和6)年1月時点の児童数は547名、各学年3クラス編成で運営しています。学級数は特別支援学級が4クラスありますので合わせて22学級となります。

「越谷市立桜井南小学校」外観
「越谷市立桜井南小学校」外観

――次に教育目標や力を入れている取り組みについてお聞かせください。

秋山先生:本校の教育目標は「『考える子 やさしい子 元気な子』~かがやけ南っ子~」です。また目指す学校像は「子どもたちを第一に考え、安全安心な環境で生きる力を育み、地域とともに歩む学校」としています。学校のホームページにも「学校経営方針」や「スクールプラン」として詳しい内容をまとめておりますのでご覧いただければ幸いです。

本校の校長として2年目を迎えますが、着任した際に学校の雰囲気が落ち着いていてとても良い状況にあるのを感じました。歴代の校長先生や現場の先生方、また地域の方や保護者のみなさんも一緒になって育て上げてきた良い流れがあるからこそ、もう一歩踏み込んだ取り組みができるんじゃないかと感じました。

「越谷市立桜井南小学校」入口にもある教育目標
「越谷市立桜井南小学校」入口にもある教育目標

「授業で勝負」を合言葉にした、わくわく感のある授業づくりと学力向上の取り組み

――具体的な取り組みについてお聞かせいただけますでしょうか?

秋山先生:ひとつは教育委員会の委嘱を受けて令和4・5年度の2年間にわたって取り組んだ「体力向上」に関する研究です。「Never give up! 自己の伸びを実感しながら粘り強く取り組める児童の育成」を研究主題として、さまざまなことに取り組みました。「Never give up!」という言葉の通り、あきらめず、ねばり強くというメッセージを伝え続け、運動のみならず朝ごはんや睡眠に関する研究も行いました。

子どもたちへも伝わるように各所に目標を掲示
子どもたちへも伝わるように各所に目標を掲示

秋山先生:先生方には「授業で勝負」を合言葉に指導力の向上にも取り組んでいただいています。具体的には“振り返り”をすごく大切にしています。子どもたちには授業を通して、自分はどんなことが分かって、どんなチカラが身についたかを自分で振り返れるようにしています。

また、ICTの活用も進んでいます。1人1台のiPadと各クラスには大画面のモニターもありますので、写真や資料を見せながら理解を深めたり、意見を集約したりしながら授業を進めています。以前はiPadも学校保管で運用していたのですが、宿題や去年からAIドリルの導入も始まって、自宅でも使えるように持ち帰りができるよう変更しました。

ほかにも本校にはロイロノート(注1)の認定ティーチャーがいまして、教員同士で学び合うような光景も見られます。認定ティーチャーは学年主任を務めるベテランなんですけど、その先生の授業を見た若手の先生の中には「自分もロイロ認定ティーチャーになりたい」と熱心に取り組んでいる先生もいます。

(注1「ロイロノート」:室内でインターネットを使って学習支援を行うためのプログラム・システム・アプリ)

学校生活における規範づくりにつながる「残り姿を美しく」する取り組み

――スクールプランにある「残り姿を美しく」という言葉も印象的ですが、具体的にどのようなことを指しているのでしょうか?

秋山先生:「残り姿」という言葉は、私が管理職選考を受けるきっかけになった先輩校長の受け売りなんですけど、学校だよりに書かれていたその内容が大変素晴らしく、自分なりに解釈をして学校経営に生かしているところです。

定期的に表彰される「のこりすがた賞」
定期的に表彰される「のこりすがた賞」

秋山先生:「残り姿」というのは自分がその場所を去った後の様子のことを指していて、例えば玄関で脱いだ履き物をきちんとそろえるとか、席を離れる時は他の子の邪魔にならないよう椅子をしまってから移動するとか。机の上を整頓しておくこともそうですし、クラスのロッカーや本棚が整理されているか、水筒は所定の場所に片づけられているかなど、学校生活のさまざまな場面で関わりのある言葉だと思っています。

「残り姿を美しく」することは生活規律や学習規律を整える規範づくりにもつながっていて、普段からの落ち着いた学校生活につながるのではないかと考えています。またこの意識は、人やものを大切にする心や、思いやりのある優しい子どもの育成にもつながるのではないかと。「残り姿」とはつまり「心の姿」でもあり、学校経営における規範づくりの大切さを改めて感じているところです。

校長先生からの一言は、子どもたちにとってうれしいものです。
校長先生からの一言は、子どもたちにとってうれしいものです。

一人の児童の提案からはじまった、前例のない「学校かくれんぼ」

――先日行われた「学校かくれんぼ」はメディアでも紹介されたそうですが、そんな特色ある取り組みについてお聞かせください。

秋山先生:実はこの「学校かくれんぼ」は、「残り姿」を意識するようになって、子どもたちがしっかり規律を守れるようになったからこそ実現できた取り組みのひとつなんです。

ある日、3年生の男の子が休み時間に校長室を訪ねて来て、「学校かくれんぼをやりたい」と私に言ったことがはじまりでした。その子とは以前にも「講和朝会でしゃべってみたい」という要望があって、私にできることならばとその夢を叶えてあげたことがあるんですが、「学校かくれんぼ」というのは前例が無く、私一人では判断できないことだったので一旦検討することにしました。

子どもたちがちょっとでもやってみたいと思うことがあれば、最初からできないと諦めて欲しくないので、何とかしてその夢を実現させられないかと素案としてまとめてみることにしました。

その内容を特別活動主任の先生に見てもらったところ、教育活動に位置づけるかたちでバッチリ案にまとめてくれたんです。さらに企画会議や、児童会の子どもたちのアイデアなども盛り込みながら遂に実現させることができました。当日はテレビの方も取材に来られて、その取り組みの様子はニュースや新聞にも取り上げていただきました。すべては一人の児童の提案からはじまったことなんです。

「学校かくれんぼ」大成功に沸く児童たち
「学校かくれんぼ」大成功に沸く児童たち

――「学校かくれんぼ」の内容について詳しくお聞かせいただけますでしょうか?

秋山先生:各学年の先生と特別支援学級の先生も一緒になって、総勢19名の先生方が校舎内に隠れました。

子どもたちは1年生から6年生まで一緒に活動する縦割り班を基本として、赤・青・黄3つのチームに分かれてそれぞれ7分間で何人の先生を見つけられるかを競うことにしました。先生によって1点、2点、3点と得点差をつけたことも本校独自のアイデアのひとつで、先生も子どもたちも一緒になって楽しい時間を過ごすことができました。

前例のないことを実施するにあたって、安全面に配慮することも重要なポイントのひとつでしたが、普段から規律を守って行動する子どもたちの様子を見ていたからこそ「いまのこの子どもたちだったらできるだろう」という確信のようなものもありました。廊下を走らないとか右側を歩くというルールもきちんと守られていたと思います。

「学校かくれんぼ」の様子
「学校かくれんぼ」の様子

――その後の反響はいかがでしたでしょうか?

秋山先生:当初は一回限りのイベントとして考えていたのですが、職員の中には続けた方が良いという意見もあって、負担感よりもやった後の充実感の方が大きい印象です。先生方も童心に帰って楽しみながらやってくれたようですし、子どもたちの表情もとても生き生きとしていました。

縦割り班のチームにしたことも大変良かったと思います。リーダーの6年生を中心に上級生が低学年の子の面倒を見るということが自然に行われていたようです。

また、メディアで紹介いただいたことによって、地域の方や保護者から「観ましたよ」とか「良い学校ですね」といったさまざまな反響をいただきました。先生方もとてもうれしかったそうです。

後日あらためてテレビを観ましたが、全力で子どもたちと遊ぶ先生方の姿や子どもたちもみんな笑顔で、その楽しそうな雰囲気がそのまま地域の方や保護者にも伝わったのかなと思います。本校の恒例行事とするかはこれから改めて考えてみます。

今後の展望をお話される秋山校長先生は、非常に柔らかな表情をされていました。
今後の展望をお話される秋山校長先生は、非常に柔らかな表情をされていました。

地域の伝統や産業についても学ぶ機会が多い恵まれた環境

――校舎に掲げられている「ししまいの里」や「だるまの里」など、地域とのつながりを感じられる活動やイベントなどはございますか?

秋山先生:「ししまいの里」については、学区内にある「香取神社」に400年以上もの歴史がある「下間久里の獅子舞」というのがありまして、本校のクラブ活動にも地域の方が教えに来てくださっている「獅子舞クラブ」があります。校内のクラブ発表会で披露したり、毎年3月に開催される「越谷市郷土芸能祭」などでも披露したりしています。なかには卒業した後も地域の獅子舞連中に入って活動を続ける子どももいます。

「だるまの里」についても、学区内に松崎達磨産業さんという工房がありまして、越谷市の伝統産業について学ぶ機会が多くあります。例えば特別支援学級の子どもたちがはりぼてのだるまを制作したり、絵付けしたものを「わくわくアート展」という市内の作品展に出品したりしています。校内にも立派なだるまがあり、本校の特色のひとつになっています。

校内に掲示されているだるまのアート
校内に掲示されているだるまのアート

通学路の見守りや教育活動のお手伝いなど、地域の方や保護者も協力的

――地域の方や保護者とのつながりはいかがでしょうか?

秋山先生:本校にも学校運営協議会が設置され、コミュニティ・スクールとしての運営が始まっています。委員の方の中には通学路の見守りをしてくださっているスクールガードリーダーや学校応援団のコーディネーター、また学校の向かいにある自動車教習所の方も委員のひとりとしてご意見をいただいています。

去年も新聞でご紹介いただきましたが、本校は自動車教習所で交通安全教室をやらせていただいておりまして、特色ある取り組みのひとつだと思います。

3年生は教習所の道路を使って自転車の乗り方を学んだり、5年生は教習所の方が実際に車を運転してブレーキの制動距離や内輪差、車には死角があることなどを実際に学ばせてもらっています。

自動車教習所での交通安全教室の様子
自動車教習所での交通安全教室の様子

秋山先生:ほかにも地域の方による登下校時の見守りや「南っこ応援ボランティア」という組織もあり、さまざまな場面で学校運営のお手伝いをしてもらっています。運動会や持久走大会のお手伝い、草取りやトイレ掃除に至るまでその活動はさまざまです。家庭科の授業で裁縫のお手伝いをしていただいたり、まち探検に出かける際の見守りなども保護者を中心にご協力いただいています。

あと春になると正門の周りにチューリップの花が咲くのも見事なんですが、「越谷市桜井地区センター・公民館 あすぱる」の方が球根を持ってきてくださって、園芸委員の子どもたちと一緒に植えて春を迎えるというのが恒例になっています。

スクールガードリーダーやボランティアのみなさん、地域の民生委員の方など日頃からお世話になっている方を学校に招いて「ありがとう」を伝える感謝の集いというのもありまして、子どもたちから直接感謝状を渡すとみなさんとっても喜んでくださいます。

「越谷市桜井地区センター・公民館 あすぱる」
「越谷市桜井地区センター・公民館 あすぱる」

生活の利便性と適度に自然が感じられる子育てに恵まれた環境

――最後に学校周辺エリアの魅力についてお聞かせいただけますでしょうか?

秋山先生:先生方にも聞いてみましたが、ひとつは地域全体があたたかいということですね。スクールガードリーダーや見守り隊のみなさんが子どもたちに話しかけてくれたり面倒を見てくださったり。保護者の方も自分のお子さんだけではなく他のお子さんのことも気にかけてくれたり、とてもあたたかい地域だなと思います。

また生活するうえで公共施設や商業施設、病院も近くにあって便利だということも言っていました。学校の隣にある「スーパーバリュー 越谷店」や、「コーナン越谷大里店」、「ロピア 越谷大里店」など身近な場所にお店がそろっています。

「ロピア 越谷大里店」
「ロピア 越谷大里店」

秋山先生:あとは適度に自然が感じられるのもこの地域の魅力だと思います。川沿いにはいろんな鳥も訪れるようで、サギやカワセミの姿も見られるそうです。学区内には小さな公園もたくさんあって、子どもたちが遊ぶ場所にも恵まれていると思います。

ちなみに学校の校庭は本校の児童と卒業生であればお使いいただけるので、学校開放で団体が使っていない時などは親御さんと一緒に来て遊んでいる光景も見られます。

ちょっとエリアを広げると「児童館コスモス」や「北部市民会館」といった施設もあり、さまざまな活動で利用できると思います。あと駅方面に行けば大袋商店街もあって個性的なお店があります。都内へのアクセスもしやすく、さまざまな魅力のある地域だと思います。

「越谷市立桜井南小学校」
「越谷市立桜井南小学校」

越谷市立桜井南小学校

校長 秋山弘幸先生
所在地:埼玉県越谷市下間久里226
電話番号:048-976-6614
URL:https://school.city.koshigaya.saitama.jp/sakuraiminami_e/
※この情報は2024(令和6)年1月時点のものです。

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