スペシャルインタビュー

さいたま市教育委員会の研究指定校としてさまざまな学習に取り組む「さいたま市立宮前小学校」

1975(昭和50)年の開校より節目となる50周年を迎える「さいたま市立宮前小学校」。「大宮」駅から5kmほどの距離にあり、「三橋総合公園」や学校のそばを流れる鴨川など、豊かな自然環境にも恵まれた落ち着いた環境が特徴的だ。近年はICTを活用した「個別最適な学び」や「食育」、「金融経済教育」など、さまざまな学習を取り入れ、ねばり強く学習に取り組む児童の育成が進められている。

今回は、2021(令和3)年度に校長として着任した髙田信太郎先生を訪ね、「さいたま市立宮前小学校」の概要や特色ある取り組み、学校周辺の地域の魅力などについてお話を伺った。

「さいたま市立宮前小学校」 髙田信太郎 校長先生
「さいたま市立宮前小学校」 髙田信太郎 校長先生

節目となる開校50周年を迎える「さいたま市立宮前小学校

――まずは「さいたま市立宮前小学校」の歴史や概要についてお聞かせください。

髙田先生:さいたま市立宮前小学校」は1975(昭和50)年の開校で、来年度は節目となる50周年に向けて記念事業を行う予定です。住所はさいたま市西区になりますが、学区域が北区と西区にまたがっているため、それぞれの地域や自治会と連携、融合しながら学校運営が行われているのは特徴のひとつかと思います。

児童数は2023(令和5)年4月時点で681名、各学年3〜4クラス編成の全25学級で運営しています。

「本気で勉強しよう(知)・心をみがき、体をきたえよう(徳・体)・人のためになろう(コミュニケーション)」を教育目標に掲げ、教職員一丸となって日々の教育活動の充実を図っています。

「さいたま市立宮前小学校」
「さいたま市立宮前小学校」

子どもたち自身が学習の仕方や内容を決める“児童選択”に重点をおいた学び

――特色ある教育活動や注目すべき取り組みについて教えてください。

髙田先生:教育目標のひとつに「本気で勉強しよう(知)」とありますが、さいたま市教育委員会の委嘱を受けて大きく3つの研究に取り組んでいます。

ひとつは「全ての子どもたちの可能性を引き出す個別最適な学び」について。令和3年度から5年度までの3年間の取り組みをまとめて、つい先日本校で研究発表会を行なったところです。

もうひとつは「食育」について。これは今年度と来年度の2年間の取り組みです。

そして3つ目は「小学校における金融経済教育」です。これは昨年度から取り組みを始めたもので、金融証券会社のプログラムを取り入れながら学習を進めています。

さまざまな授業もさることながら、広々とした校庭も「さいたま市立宮前小学校」の魅力
さまざまな授業もさることながら、広々とした校庭も「さいたま市立宮前小学校」の魅力

――それぞれの取り組みについて簡単にご紹介いただけますでしょうか。

髙田先生:ひとつ目の「個別最適な学び」ですが、「ねばり強く学習に取り組む児童の育成」を研究主題とし、国語、算数、理科、社会の4教科を中心に取り組みを進めて来ました。

従来の学習はどちらかというと黒板に向かって一斉に授業を受け、先生がやりなさいと言ったことをみんなで一緒にやるのが一般的です。「個別最適な学び」では子どもたち一人ひとりが自分で学習のゴールを確認したうえで、学習の仕方や内容、まとめ方など子どもたち自身に選択させることを重視しています。本校ではそれを“児童選択”と呼んでいます。

以前の一斉授業では、授業中にわからないことがあったとしても恥ずかしいから先生に聞けない子どもがいましたが、今は自分で自分のことをメタ認知することで、「自分はこの部分がわからないから先生に聞こう」と、自分で判断して行動できる子が増えたように思います。

パソコンやタブレットなどを駆使した能動的な学習が身につく「個別最適な学び」
パソコンやタブレットなどを駆使した能動的な学習が身につく「個別最適な学び」

給食メニューを考案するなど、「食育」×教科横断的な学び

――続いて「食育」についても教えていただけますでしょうか

髙田先生:「食育」についてはSDGsに関する教育の一環として数年前から取り組んでいましたが、令和5年度にさいたま市教育委員会の研究指定校として委嘱を受けたことで、より熱心に取り組みを進めています。

例えば、地元で活躍するプロの料理人に来ていただいて学校給食を作っていただく「地元シェフによる学校給食」や、子どもたち自身が給食のメニューを考案して実際に食べる、ユニークな取り組みも行っています。メニューを考えるのは5年生で、「グローバル・スタディ」の時間を使って取り組んでいます。家庭科で学習した栄養素についての知識も生かしつつ、自分たちで考えたメニューを英語でプレゼンします。これは教科横断的な学びでもあり、メニューの内容だけではなく英語のプレゼンスキルも求められます。最終的にプレゼンした中でもっとも良いメニューが選ばれ、3学期に実際の給食として提供されます。

「グローバル・スタディ」の様子
「グローバル・スタディ」の様子

髙田先生:また、学校菜園におけるヨーロッパ野菜の栽培など、さいたまヨーロッパ野菜研究会と連携した取り組みも行なっています。校舎の南側に畑があり、現在、2種類のヨーロッパ野菜を栽培しています。栽培委員の子どもたちや職員も一緒になって取り組んでいて、収穫した野菜は12月に給食として提供する予定です。

「食育」に関する取り組みは他にも、地域の「子ども食堂」と連携した取り組みもあります。月1回、日進公園コミュニティセンターで開かれている子ども食堂の方々に本校へお越しいただいて、子どもたちと一緒に調理実習をしていただきました。

校舎南側の畑の様子
校舎南側の畑の様子

小学生向けに開発された金融証券会社のプログラムを導入

――「金融経済教育」についても教えていただけますでしょうか

髙田先生:これもさいたま市教育委員会の委嘱による研究で、高学年を対象に昨年度から取り組みを進めています。

金融証券会社のプログラムを取り入れており、お金について話し合ったり、講師の方にお越しいただいて、「お金の価値」について道徳的なお話を伺ったりします。

本校の校長として着任したのが3年前になりますが、コロナ禍でいろいろな取り組みが制限されていた状況だったからこそ、出来ることを見極めて積極的に取り組んでいくことが大事かなと思い、進めております。

着任3年目ながら、さまざまなことに取り組む髙田校長先生
着任3年目ながら、さまざまなことに取り組む髙田校長先生

学校運営に協力的な地域とともに子どもたちを育む

――次に地域との関わりや具体的な活動などがあれば教えてください

髙田先生:冒頭でも触れましたが、本校は西区と北区に学区域がまたがっているため、特定の地域と深く結びついているというよりも、いろいろな地域や自治会と連携しながら協力し合っているのが現状です。

例えば、「大宮日進七夕まつり」に和紙で作った灯籠を出したり、三橋6丁目の文化祭では子どもたちの作品を展示したりしています。学校の近くに神社があるため、夏祭りなど子どもたちにとって地域と関わる貴重な機会が、宮前町は比較的多くある印象です。こういった機会に、子どもたちをどう関わらせてあげられるかが、今後の課題かなと思っています。

「大宮日進七夕まつり」の様子
「大宮日進七夕まつり」の様子

髙田先生:また昨年度から本校もコミュニティ・スクール(※1)に移行しましたが、学校運営協議会の委員長がチャレンジスクールの代表を務めてくださっていることもあり、チャレンジスクール(※2)の取り組みはとても熱心です。先ほどお話しした「子ども食堂」とのつながりも、実は「子ども食堂」の代表の方がチャレンジスクールでもお世話になっているんです。地域の方はみなさん学校運営にとても協力的です。

※1「コミュニティ・スクール」:学校と地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる「地域とともにある学校」への転換を図るための有効な仕組み。学校運営に地域の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていくことができ、「学校運営協議会」 を設置している学校を指す。

※2「チャレンジスクール」:土曜日や放課後等に学校の教室等を活用して、地域住民、団体等の参画を得て、地域と学校が連携・協働して、子どもたちの自主的な活動や地域住民との交流等を支援し、地域社会の中で、子どもたちを心豊かで健やかにはぐくむことを目的として実施している事業。

生活の利便性と自然環境の豊かさを兼ね備えた住みやすい地域

――最後に、これから日進町エリアにお住まいになられる方々へメッセージをお願いします。

髙田先生:学校の南側に位置する日進のあたりは、「大宮」駅方面にもアクセスしやすいうえ、「三橋総合公園」や鴨川沿いの環境など、自然にも恵まれた過ごしやすい環境だと思います。さいたま市がもつ生活の利便性と自然環境の豊かさを両方とも兼ね備えた地域で、近くにはショッピングセンターやお店もありつつ、かと言って都心部ほどにぎやかではなく、ほどよい住み心地だと思います。

「三橋総合公園」
「三橋総合公園」

髙田先生:少し話は逸れてしまいますが、私はいつも朝会の講話が終わった後に、子どもたちへ問題を出しています。1年生から6年生まで、難易度を分けて「やりたい子はやってごらん」と。答えが出た子は校長室の私のところに直接回答を持って来るのですが、まずはこのように子どもたちに好奇心を持たせ、そして、いろんなことにチャレンジできる子どもたちを多く育てられる環境を作っていきたいと思います。

朝会の後に出されるユニークな問題
朝会の後に出されるユニークな問題

髙田先生:来年度はいよいよ開校50周年に向けてさまざまな記念事業を進めることになりますので、学校の姿勢や取り組みを地域や保護者のみなさまにも知っていただく良い機会にしたいなと思っています。

埼玉県さいたま市西区・「さいたま市立宮前小学校」
埼玉県さいたま市西区・「さいたま市立宮前小学校」

さいたま市立宮前小学校

校長 髙田 信太郎先生
所在地:埼玉県さいたま市西区宮前町341
電話番号:048-623-8121
URL:https://miyamae-e.saitama-city.ed.jp/
※この情報は2023(令和5)年12月時点のものです。