スペシャルインタビュー

特別な日を彩るために、地元「朝霞台」で“ひと手間”と“情熱”をのせてスイーツを届ける「パティスリー オランジュ」

「朝霞台」駅から高架沿いに徒歩5分ほどの場所にある「パティスリー オランジュ」は、地元出身の橋本清二シェフが2010(平成22)年に開いた本格志向のパティスリー。店内に入るとジュエリーのように華やかなプチガトーが並んでおり、誕生日や記念日に、または手土産にと、絶えずお客さんが訪れる。

「ケーキは特別な日に食べるものだから、ひと手間をかけたものを作らないとね」と話す橋本シェフ。この思いはすべての洋菓子に詰まっている。売り場に面したガラス張りの厨房では、シェフとスタッフが、そうした想いを込めながらキラキラとした様子で手を動かしている。

ここ「パティスリー オランジュ」が人気を集めている秘密は何なのだろうか。今回はお店の特徴とともに、地元っ子である山崎シェフから見た、朝霞台の魅力についてお話を聞いた。

「パティスリーオランジュ」橋本清二シェフ
「パティスリーオランジュ」橋本清二シェフ

――まずは、朝霞台にお店を開かれるまでのあゆみ、開業のきっかけを教えてください。

橋本さん 「きっかけ」と言うと難しいのですが、もともと、ホテルで働いていた時代が長かったんです。でも、ホテルは幅広い仕事があったため、たとえシェフになっても、なかなか自分のやりたいことだけは出来なかったんです。

「パティスリーオランジュ」外観
「パティスリーオランジュ」外観

そのため、一度はホテルを退職して町場の店で働きましたが、結局お店を出すまでには至らず、またホテルのシェフに戻ったりもしました。それでもやっぱり、なかなかやりたいことができなかったんですね。

――「やりたいこと」は何だったのでしょうか?

橋本さん お菓子もそうですが、ホテル時代には若い子たちも育ててきたので、それが大きかったですかね。その頃、時代の流れで「コンプライアンス」なども厳しく、想いを伝えたいけれど、なかなかストレートな言葉は使いづらく感じていました。そうすると、言いたいことが上手く伝わらないなと感じていました。

ギフトにもぴったりな洋菓子など、多彩にメニューがそろう店内
ギフトにもぴったりな洋菓子など、多彩にメニューがそろう店内

――若い世代を育てたいという思いがあって、ご自身の店を持たれたのですね。

橋本さん それも一つの理由ではありますかね。自分が作りたいものを作りたいし、言いたいことを言いたい、という風に思っています。お店を出してみたら、もちろん大変ですが、好きにできるのでストレスは無い。だからこそ13年やってこれたという感覚です。

商品ケースには、美しいプチガトーが並ぶ
商品ケースには、美しいプチガトーが並ぶ

――スタッフの皆さんを見ていると、シェフをすごく信頼している感じが伝わってきます。

橋本さん ありがとうございます。でもうちは、一切募集はしていないんです。社員は地方の子が多いですが、自分でここを見つけてやって来て、ひとり暮らししながら働いて、「将来は店を出したい」と頑張っているんですね。だからモチベーションが違うし、プロ意識も高い。そこが当店の一番の売りかもしれません。

製造もできるだけスタッフに任せるようにしていて、ルセット(レシピ)は今でも私が出しますが、作るのはスタッフ達という事も多く、本当に感謝しています。だからせめて昼飯と夕飯くらいはと思って、毎日私が作って食べさせてます(笑)。

スタッフもいきいきと働いている
スタッフもいきいきと働いている

――頼り頼られ、支え支えられる。良い人間関係が人気店を形づくっているんですね。そもそもなぜ、お店を出す場所として朝霞台を選ばれたのですか?

橋本さん それはもう、自分の地元だったからですね。ここに生まれ育ったので、お店を出そうと思った時に「地元しかないよな」と思って。知り合いや助けてくれる人も多いし、暮らすにもすごくいい街ですしね。

――お店のコンセプトや、お菓子作りのポリシーについて教えてください。

橋本さん 強いて言えば「ひと手間」と「情熱」ですかね。普通に作るだけではなくて、「何かひと手間を加えよう」という事を考えて作っています。たとえばフルーツにしても、ひと手間かけて漬け込んでみたり、生クリームにしても、マスカルポーネをちょっとだけ入れてみたり。お客さんはまず気づかないような事で、自己満足に近いところもあります。でも、それでいいんじゃないかなと思っています。

魅力的なケーキの数々に隠れた“ひと手間”が加えられている
魅力的なケーキの数々に隠れた“ひと手間”が加えられている

そのため、当店のケーキはけっこう手間がかかってますよ。1日で完成するケーキはほぼ無いですね。大体3日くらいかけて作っています。でも、最近は冷凍技術も上がっているため、上手く工程を分ければ時間的には早く終わるんです。

「1日で全部やる」という昔からの考え方もありますが、それをやると、一番負担がかかるのは従業員になってしまう。だから手間をかけつつも、工程を何日かに分けて早く帰ってもらって、ちゃんと休みが取れるようにしています。

ギフトにもおすすめの洋菓子が並ぶ
ギフトにもおすすめの洋菓子が並ぶ

――その「ひと手間」が認められて、朝霞台を代表するパティスリーになっているんですね。

橋本さん 有難いことです。最初は勢いで始めた店でもあったので、認知されるまで5年、6年くらいは大変でしたが、それでも手間を省いて安くすることは無かったですね。

お客さんはなかなか気づかないとは言いましたが、わかってくれる方はわかってくれているのだとも思います。今もそういった人たちに支えられてますね。原材料なども高くなり、致し方なく値上げもしましたが、それでも文句も言わず買ってくれる方が多くて、本当に有難いことです。

多彩な洋菓子の中から、詰め合わせを考えるのも楽しい
多彩な洋菓子の中から、詰め合わせを考えるのも楽しい

――主にどんな方が店を訪れていますか?

橋本さん やはり地元の方が大半ですが、見ていると、初めていらっしゃるお客さんも増えていますかね。ただ、「通りがかり」で気づける場所ではないので、どこかで調べたりして、遠くから来てくれているのだろうと思います。

恐らく、この辺りでは商品の種類が多い店だと思うので、日常使いというよりは、特別な時のためにと訪れてくださる方が多いという感覚はあります。そのため“非日常”を感じてもらえるように、種類はなるべく置くようにしていて、だいたい毎日30種類くらいは並べるようにしています。一番頑張ってくれているのは、スタッフですけれどね(笑)。

“非日常”を感じられるようにと、種類も多く並べるようにしているという
“非日常”を感じられるようにと、種類も多く並べるようにしているという

――朝霞台の住民について、どんな方が多いと思われますか?最近新しく来られるようになったお客さんの印象はいかがですか?

橋本さん 住民の特徴と言うと難しいですが、当店にいらっしゃるお客さんの変化としては、最近特にカップルの方が多くなった感覚はありますかね。ネットで知り、遠くからも来てくれているのかなと。あとはベビーカーを押してくる人も増えましたね。ファミリー層が増えているのでしょうか、恐らく朝霞台周辺の方が多いと思っています。

埼玉県朝霞市・「パティスリーオランジュ」
埼玉県朝霞市・「パティスリーオランジュ」

――おすすめの商品、こだわりの商品について教えてください。

橋本さん ひとつは「モンブラン」が看板商品になっていますね。通年で出していますが、和栗を使っている点がポイントです。あとは中に生クリームも入っているのですが、それをまろやかに感じさせるような工夫をしています。モンブランは創業の時からルセット(レシピ)も変えていない、一番の定番商品ですね。

あとは「チーズケーキ」です。スタンダードなものとスフレタイプのものを用意していて、北海道産のチーズを3種類程組み合わせて使っています。この地名を付けた「弁財チーズケーキ」は昔から作っているチーズケーキで、濃厚な焼きチーズケーキです。もうひとつ、最近始めた「醇香」というスフレタイプのチーズケーキもあります。こちらはメレンゲが入っているので、食べた食感も大きく違うと思いますので、どちらもぜひお試しください。

――焼き菓子のおすすめがあれば教えてください。

橋本さん いちばん売れているのはバウムクーヘンで、手土産にとても人気ですよ。ほかには、「レモンケーキ」や「ラングドシャ」、今年のバレンタインから始めた「クッキーサンド」もおすすめです。

パッケージもかわいい、人気の「レモンケーキ」
パッケージもかわいい、人気の「レモンケーキ」

――朝霞台の街にとってどのような存在のお店でありたいですか?

橋本さん 朝霞台はとても便利なところで、ちょっと歩くだけでいろいろな面白い店があるのですが、当店もその中のひとつであればいいなと思っています。

「毎日来てほしい」とはあまり考えておらず、ケーキは嗜好品なので、特別な時に来てもらって、「また来月も来れたらいいな」と思ってもらえれば嬉しいです。

――橋本シェフは朝霞台に生まれ育ち、いまも朝霞市民ということですが、「地元っ子だから知る朝霞台の魅力」を教えてください。

橋本さん 穴場という事だと、黒目川沿いはとても気持ちいいですね。大昔は汚れていた時期もありましたが、すっかりきれいな川になっていて、うちも子どもが小さい頃にはよく遊びに行っていました。桜の季節は特に綺麗ですね。あとは、地域の祭りで「彩夏祭」というお祭りが8月にあって、これもおすすめです。

春には「桜まつり」も行われる黒目川沿いの様子
春には「桜まつり」も行われる黒目川沿いの様子

他には、ありきたりですが、朝霞台にはJRも東上線もあるので、どこかに行こうと思えば気軽に行ける。街には美味しいものもたくさんあって、古いお店もある。家賃もそんなに高くないと感じています。家族で暮らすには本当にいい街だと思いますよ。

――おすすめの美味しいお店などはありますか?

橋本さん お隣の「一福鮨」はすごく人気のお店で、よく行列ができてますよ。美味しいです。あとは、すぐ近くのお好み焼き屋さん「ちろりん村」もお気に入りです。スタッフとよく行ってますね。

近隣にも魅力的なグルメ店が並んでいるという
近隣にも魅力的なグルメ店が並んでいるという

――最後に、これから朝霞台に暮らしたいという人に向けてメッセージをお願いします。

橋本さん 私にとっては地元なので、「魅力」と言われるとピンとこないところもあるのですが、やはり「いいところだよ」伝えたいですね。暮らしに便利な環境が整いながら自然も広がっている。最近は、マンションもどんどん建っているので、これからもっと人口が増えて、お店も増えていって…、将来が楽しみですよね。朝霞台はそんな街ですので、ぜひ住んでもらえたらと思います。

パティスリーオランジュ

オーナーシェフ 橋本 清二さん
所在地:埼玉県朝霞市西弁財2-2-24 かつみビル1F
TEL:048-424-7514
URL:https://www.orange77.jp/
※この情報は2023(令和5)年5月時点のものです。