校歌の一節より。“日本の新しい春を呼ぶ”子どもたちを育てる「さいたま市立春岡小学校」

1889(明治22)年の創立より135年目を迎える「さいたま市立春岡小学校」。児童数およそ970名の規模の大きな学校で、学校・家庭・地域が一体となった学校運営が行われている。毎年11月に学校の敷地内で行われる地域のイベント「春岡ふれあいフェスティバル」は700名以上もの人が集まる盛大なイベントで、地域とのつながりを直に感じられるだろう。 今回は2023(令和5)年度に着任された千明勉校長先生を訪ね、「さいたま市立春岡小学校」の概要や特色ある取り組み、また地域の魅力についてお話を伺った。

「さいたま市立春岡小学校」校長 千明勉先生
「さいたま市立春岡小学校」校長 千明勉先生

創立135年目を迎える地域に根ざした学校「さいたま市立春岡小学校」

――まず学校の歴史や概要、教育目標についてお聞かせください。

千明先生:「さいたま市立春岡小学校」は1889(明治22)年の創立で135年目を迎えます。児童数は約970名で市内でも規模の大きな学校です。教育目標は「人間尊重を基盤とし、豊かな心とたくましい体をもち、自ら学びを創造する子どもの育成」を掲げ、「はつらつ元気な子(体)」、「ルールをまもる子(範)」、「おもいやりのある子(徳・コミュニケーション)」、「かんがえる子(知)」の4つを柱に教育活動を行っています。

目を見てあいさつすることや、清掃もそうですし、本校の素晴らしい校歌をしっかり歌いましょうといったことを子どもたちに伝えています。

教育目標の具体策として目を見てあいさつをすることなどを伝えている
教育目標の具体策として目を見てあいさつをすることなどを伝えている

「春小まつり」や「なかよし給食」など異学年交流にも取り組む

――授業や日々の教育活動において大切にされていることはございますか?

千明先生:ひとつは主体的、対話的で深い学びを意識した授業を目指しています。例えば、課題解決に向けた学習や実際の体験を通して学ぶ学習もそうですし、何よりクラスの友だちと話し合ったり交流したりしながら学びを深めていくということを大切にしています。 もうひとつは異学年交流です。11月に「春小まつり」という学校行事がありまして、1年生と6年生、2年生と4年生、3年生と5年生がそれぞれペアになって自分たちのお店を開きます。

主体的、対話的で深い学びを意識した授業が行われている
主体的、対話的で深い学びを意識した授業が行われている

異学年交流を通して、どうやったら他者とうまくコミュニケーションがとれるか考えるきっかけにもなりますし、いろいろな気づきも得られると思います。また異学年の子と一緒に給食を食べる「なかよし給食」という取り組みも行われていまして、学年を越えた子どもたちの交流はこれからも大事にしていきたいと思っています。

学力や体力の向上につながるようなタブレットの効果的な活用を推進

――学校だよりを拝見すると、2023(令和5)年度は「一人一台のタブレット端末を効果的に活用した教育活動の推進」を重点に置いた取り組みが行われたようですが?

千明先生:2020(令和2)年度に一人一台のタブレットが導入されさまざまな場面で活用してきましたが、2023(令和5)年度はこれまでの成果と課題を踏まえながら子どもたち一人ひとりの学力や体力の向上につながるような効果的な活用のあり方について研究を深めてきました。

例えば研究主任の教員を中心に研修の機会を設けて教員一人ひとりのICTスキルを高めたり、授業ではアプリを活用してクラウド上に意見や考えを集約して共有するなどICTのよさを活用した授業の改善にも取り組みました。

教員も研修などでICTスキルの向上に努めている
教員も研修などでICTスキルの向上に努めている
他にもクイズ形式で学習するアプリ「Kahoot!(カフート)」を活用して、基礎基本を徹底するなどさまざまな取り組みを行ってきましたが、重要なのはタブレットはあくまで学習するための道具であり、それを使うことそのものが目的ではないという点です。効果的に活用して学びを深めるためにはどうすれば良いか、また子どもたちの人間形成に役立つような活用の仕方についても研究を進めているところです。

学校・家庭・地域が連携・協働する学校づくり

――もうひとつの重点的な取り組みとして「コミュニティ・スクールを核とした学校・家庭・地域が連携・協働する学校づくり」とありますが?

千明先生:本校は2022(令和4)年度からコミュニティ・スクールとして運営が行われています。学校運営協議会の委員には春岡地区社会福祉協議会の会長や春岡公民館の館長、自治会長やPTA会長など多くの方に参画いただいています。委員の方のなかには学校の近くにある芝浦工業大学の先生もいらっしゃって、大学とのつながりは本校ならではの特色だと思います。芝浦工業大学と言えば理工系人材の育成で有名ですが、今後はSTEAM教育や理工系人材の育成などについてもぜひお話をお伺いできればと思っています。

地域の方の協力による図書ボランティアも
地域の方の協力による図書ボランティアも

また学校のある春岡地区は古くからこの地域にお住まいの方も多く、自治会をはじめ地域のつながりがしっかりしているのを感じます。10月に行われる自治会対抗の運動会や11月には本校の校庭で行われる「春岡ふれあいフェスティバル」という春岡地区社会福祉協議会主催のイベントもあって700名以上もの人が集まります。

ご近所や地域とのつながりが希薄になっている現代において、このようなイベントが盛大に行われているのは珍しくこの地域の魅力を物語っていると思います。

――近隣の保育園や幼稚園、中学校と連携して取り組んでいることはございますでしょうか?

千明先生:まず保幼小の連携については、本校の1年生が年長さんを迎え入れて学校について紹介するという交流があります。コロナ禍が明け、2023(令和5)年度から少人数で実施をしたり日程を分散させるなど調整をしながら交流を再開しているところです。

1年生が年長さんを迎え入れて学校を紹介する交流などもある
1年生が年長さんを迎え入れて学校を紹介する交流などもある

また中学校との連携については教員間で行われる合同研修会があります。小学校と中学校の教員がそれぞれの学校を訪ねて生徒指導の仕方や特別支援教育のあり方について一緒に学んだり、教科ごとに分かれて授業でどのように教えているのかなど議論を行ったりしています。また、本校の6年生が進学予定の中学校へ見学に行く「つぼみの日」というのも行われています。

「東大宮」駅と「七里」駅の2駅が利用できる利便性の高い生活環境

―― 今後この地域に移り住む方に向けて学校周辺の地域の魅力についてお聞かせください。

千明先生:学校周辺は戸建てを中心とした住宅地で駅から少し離れているのもあり、落ち着いた雰囲気です。近くにはドラッグストアやスーパー、コンビニもあるので生活するのには便利だと思います。またJR宇都宮線「東大宮」駅と東武アーバンパークライン「七里」駅の2駅が利用できるのは何より便利だと思います。車で移動する際も国道16号線が近く、岩槻ICを利用すれば遠方へのお出かけもしやすいと思います。

――おすすめのスポットなどはございますか?

千明先生:この時期のおすすめと言えばやはり見沼代用水沿いの桜並木です。全長20kmにわたって約2千本もの桜が続く見沼代用水沿いの桜並木は“日本一の桜回廊”とも呼ばれています。

”日本一の桜回廊”とも称される見沼用水沿いの桜並木も近い
”日本一の桜回廊”とも称される見沼用水沿いの桜並木も近い

あと学校から歩いて10分ほどの距離に「さいたま市春おか広場」という施設があります。敷地内には芝生広場や花畑のほかソフトボール場や会議室を備えた研修施設もあり開放的な雰囲気です。毎週土曜日の午前中には「春おか野菜市」という朝市も開催されていて、地元で採れた新鮮な野菜が揃います。学校の西側にも「中村農園」さんという野菜の直売所がありますが、遠方からも買い物に来る方がいるそうです。自然の豊かさを感じられるのもこの地域の魅力のひとつだと思います。

校歌の一節より「日本の新しい春を呼ぶ 大宮春岡」

――最後に、今後入学を予定されているご家族に向けてメッセージをお願いします。

千明先生:冒頭でも触れましたが、本校ではまずあいさつと掃除ができるようになりましょうということを子どもたちに伝えています。将来的なキャリア教育という点でもあいさつは人と人とをつなぐ重要なコミュニケーションですし、掃除をすることは仕事にも通じるところがあると思っています。

あと本校の校歌もぜひ聞いていただきたいのですが、歌詞のなかに「日本の新しい春を呼ぶ 大宮春岡」という一節があります。先日行われた卒業式でも6年生に贈る言葉として「君たちに期待したいことは2つ。ひとつは憧れられるような人になって欲しい。もうひとつは日本の新しい春を呼べるような大人になって欲しい」と伝えました。

“日本の新しい春を呼ぶ”と校歌に歌われる「さいたま市立春岡小学校」
“日本の新しい春を呼ぶ”と校歌に歌われる「さいたま市立春岡小学校」
 2023(令和5)年度に本校の校長として着任し2年目を迎えますが、私がいま思うのは教育における「不易」と「流行」のバランスこそ大切だということです。白でもなく黒でもないグレー、赤でもなく白でもないピンク、そこに真実があると思っています。

学校経営方針をまとめたグランドデザインには基本的に市の方針や施策に沿って様々な教育活動を位置づけていますが、学校というところについて、すでにある価値観や定義のようなものを子どもたちに押し付けるようなことは控えるようにしたいと思っています。友達や先生との様々な活動を通して学校はどういうところかその答えを自分で見つけられるような子どもたちに育って欲しい。卒業するときに「私にとって学校は〇〇するところだった」って自分なりに表現できるような、そんな学校づくりをしていきたいと思います。

そのためにも日々の授業をひとつひとつ大切にしていきたいですね。ICTも効果的に活用しながら子どもたちの学ぶ意欲や興味、関心を大事にして育てていきたいなと思います。

さいたま市立春岡小学校

校長 千明 勉 先生
所在地:埼玉県さいたま市見沼区春岡2丁目29-1
電話番号:048-683-3281
URL:https://haruoka-e.saitama-city.ed.jp/
※この情報は2024(令和6)年3月時点のものです。