さいたま市立美園北小学校 校長 石川顕一先生 インタビュー

「埼玉スタジアム2002」のすぐ隣に新規開校!きれいで広々とした校舎で学べる「さいたま市立美園北小学校」 校長 石川顕一先生

2019年春、「みそのウイングシティ」の一角に、このエリアで2つ目となる小学校が開校した。新設の「さいたま市立美園北小学校」は、美園地区の子どもたちを中心に、美園東、中野田、下野田、大門、南部領辻からも児童が通い、開校時点で600名ほどの規模となっている。今回は同校で初代校長として活躍されている石川顕一校長を訪ね、学校の特徴や地域との関わり、子どもたちの将来に対する先生方の想いなどについてお話を伺った。(※この情報は2019(令和元)年10月時点のものです。)

今回取材に協力してくださった石川顕一校長先生
今回取材に協力してくださった石川顕一校長先生

――まずは、「美園北小学校」の沿革と概要を教えてください。

石川校長:まず、この「みそのウイングシティ」という大規模な開発事業は、約2万人の人口増加を見込んで計画されたそうです。小学校については、1万人あたり1校が必要だということで、当初から「美園小学校」と「美園北小学校」の2つの小学校が計画されていました。その後、先に美園小が開校し、それに続いて今年本校が開校しました。そのような経緯もあり、本校には美園小に通っていた子どもたちが多くいます。また、美園小だけではなく、近くの「新和小学校」や「野田小学校」「大門小学校」からも児童が加わり、全630名の子どもたちで学校がスタートしました。

たくさんの生徒が通学する
たくさんの生徒が通学する

――現時点での児童数や、キャパシティに対しての児童数はどのような状況でしょうか?

石川校長:現時点では630名、20クラスとなっており、各学年が2~4クラス、そして特別支援「ひまわり学級」が2クラスあります。6年生は3クラスで、学年が下がるごとに人数が増え、現在1年生が4クラスとなっています。今後も新入生は増えていくと思われますが、教室数については現在の設計のままで、各学年4クラスまで対応できるので、当面は子どもたちも快適に過ごせると思います。ただ、各学年が5クラス以上になってくると、特別教室を改造して普通教室にしたり、プレハブ棟を設置するなどで対応していくと思います。

――校舎について、特徴的な設備や意匠などがあれば教えてください。

石川校長:教室や廊下には木材がたくさん使われているので、落ち着いた雰囲気があると思います。また、教室と廊下がスライド式のガラス戸で仕切られているので、廊下から教室の中がよく見えるのも特徴ですね。また、昇降口から3階までつながる大きな階段も特徴です。

4メートルもある広々とした廊下
4メートルもある広々とした廊下

中央にある階段は幅5メートル!
中央にある階段は幅5メートル!

また、環境に配慮し、太陽光パネルや発電設備、雨水を利用する設備などがあるほか、車椅子の方でもエレベーターで3階まで上がれるようにユニバーサルデザインも取り入れています。各フロアは、昇降口も含め、全く段差のない設計になっていますし、トイレも「みんなのトイレ」という多目的トイレが設置されています。

発電量も見ることができる
発電量も見ることができる

なので、“特別なもの”というのではなく、学校の設計自体が“豪華さ”や“先進性”とかではなく、“子どもたちが安全に、落ち着いて過ごせるように”という方向に向いていて、そのための知恵がふんだんにつまっている校舎だと感じています。

――学校目標、教育目標について教えてください。

石川校長:本校のキーワードは「笑顔」です。大人に対しては「笑顔あふれ、瞳かがやく子どもの育成」という言葉を、子どもたちに対しては「あふれる笑顔、輝くひとみ」という言葉を作り、合言葉にしています。これは私が開校の時に考え、みなさんに承認をいただいたものです。

この「あふれる笑顔、輝くひとみ」という言葉は、ただ“日ごろからニコニコ笑って過ごしましょう”という表面的なものではなく、子どもたちが将来自立をして、社会人として生活をしていく時にも笑顔でいられるように、そして生涯にわたって幸せな人生を送れるようにと、小学校で必要な力をしっかり身に付けてもらいたい、という思いが込められています。知識や技能といったいわゆる“学力”も大切ですが、それ以上に、やりぬく力や協調性、創造性、問題解決力などの“教科書には載っていない総合的な人間力”を育てていきたいと思っています。そしてその結果が、「あふれる笑顔、輝くひとみ」であると考えています。

――課外活動や学校行事などについて教えてください。

石川校長:課外活動でいうと、今年の5月に「金管バンド」の活動が始まりました。また、授業用ではありますが特にユニークなのは、音楽室に琴が20帳、三味線が5棹(さお)、和太鼓が4台など、和楽器が多く用意されているところでしょうか。といっても、子どもたちは限られた時間の中で学んでいるので、まずは音を出してみるところからという段階ですね。ただ、他校では教育委員会に借りて授業を行っているところもあるので、その点では恵まれているのかなと思います。

和楽器が充実している
和楽器が充実している

和太鼓も完備
和太鼓も完備

また、今まさに盛り上がっていることとしては、校歌と校章についてです。校歌は先日ちょうど出来上がったばかりで、現在は各クラスで練習をしているところです。ちなみに作詞は、副教育長や大宮区長も務められた宮澤新樹さん、作曲はバリトン歌手の平林龍さんです。お二方とも「美園小学校」の作詞作曲をされている方です。平林さんは今度校歌の指導にも来てくださる予定となっています。
実は、この校歌と新しい校章のお披露目会を11月に「埼玉スタジアム2002」で開催する予定となっています。メインスタンドに子どもたちを座らせて、ピッチサイドから作曲者の平林龍さんに歌ってもらう予定です。

行事としては、今まさに練習中なのですが、秋の運動会が大きなものになります。今年は開校記念運動会ということもあるので、子どもたちの表現運動の中に「開校おめでとう」というフレーズを散りばるなど、今年ならではの工夫をしています。ただ、新しい学校だと運動会に関わる道具を集めるのが大変でして…。得点板やプラカードなど、他の学校では当たり前にあるものがなくて、今奔走しているところです。

――教育活動に関して、特に力を入れていきたいことはありますか。

石川校長:教育課程の色付けに関しては、現在非常に慎重にやっておりまして、今はまず“この地域ならではのもの”について一つ一つ確認をしているところです。今後は美園地区ならではの地域資源を活かした授業を重視していけたらと思っています。まだまだ研究途中ではありますが、具体的には「埼玉スタジアム2002」と「埼玉高速鉄道(SR)」の2つをイメージしています。

埼スタについては、本校が“埼スタに一番近い小学校”となりますので、その特徴を是非活かしていきたいと思っています。例えば、埼スタの前の公園で自然に触れてみたり、絵を描いてみたり、実際に埼スタの見学に行ったりなど。今後も機会があれば埼スタとつながっていきたいですね。

「埼玉スタジアム2002」が見える距離
「埼玉スタジアム2002」が見える距離

また、「埼玉高速鉄道(SR)」については、学区内に本社があるので、子どもたちが駅員さんなどに直接話を聞く機会も持ちやすいですね。先日は生活科の学習で、きっぷの買い方や電車の乗り方などを駅員さんに直接教えて頂いたりもしました。他にも様々な部分で協力して頂いていますが、今後もこのような地域の特色を積極的に取り入れていきたいと思っています。

ただ、各教科については「この学校の施設を効果的に活用するにはどうすればよいのだろう」ということを教職員の中で検討・研究している段階ですので、これから明確になっていくのかと思います。「和楽器をどう活用するか」「豊富な理科備品をどう使うか」「広いスペースで何ができるか」など、より良い授業展開に向けて、今まさに研究の真っ最中というところです。

――日課表を見ると木曜日だけ休憩時間が長く、変則的になっていますね。これはなぜでしょうか。

石川校長:本校では開校当初から、木曜日の午前中に40分間という長い休み時間をとっていて、これは子どもたちが自由に遊べる時間に充てられています。普通だと10~15分程の休み時間しかないので、子どもたちもなかなかまとまった時間を取りづらいと思うんです。なので、その部分を学校があえて作ってあげることで、そこで何か新しい学びや経験が生まれることを期待しています。

運動会の練習の様子
運動会の練習の様子

やはり、遊ぶということは人と人がふれあうことなので、色んなことが起きるわけです。当然トラブルや課題も生まれます。でも、その課題を乗り越えていくことで、人は成長できますし、人間関係のつくり方も身に着けることができると思うんです。なので、この休み時間を使って、「失敗した」「喧嘩をした」「トラブルが起きた」という時に、「それに対してどのように対処すればいいのか」「どのように修復すればいいのか」ということを、経験し、自分自身で学んでいってもらえればいいなと思っています。

――地域の方との連携や交流について、どのような取り組みをされていますか?

石川校長:今年私が着任した時には、まずこの地域の方がどんな思いをもって、どんなつながりをもっているかということをお聞きしたいと思い、自治会の会長さんに会いに行きました。学校の近くには美園地区と岩槻地区にそれぞれ連合自治会というものがあり、それぞれ地区の状況を伺ったり、他にも育成会や社会福祉協議会などとも少しずつ話を進めていきながら、地域の方々が学校経営に参画する「コミュニティ・スクール」の形成を目指しています。

この「コミュニティ・スクール」は、新しい学習指導要領にも盛り込まれいて、全国的にも広がっているものです。簡単に言えば、地域、家庭、学校という三者が、それぞれの立場から子どもたちの教育について意見を出し合って、学校の経営方針を決めていこうというものなんです。
この三者が同じベクトルを向いて、子どもたちが健全に過ごせるために「三者で協力して何ができるか」「どのような役割分担にすべきか」などを考えています。これが「コミュニティ・スクール」の根幹になる部分です。

ちなみにこの“地域”という部分には、自治会や育成会の方の他、埼スタや鉄道会社の方、「浦和大学」の方などにも入って頂いていて、この美園地区全体の思いを一つにしよう、という想いでやっています。

きれいな校舎
きれいな校舎

――子どもたちに接するにあたって、先生方の間で共有している共通認識などがあれば教えてください。

石川校長:これも本校の特徴だと思いますが、1つは子どもたちの安全に関してはすごく高い意識を持っていることだと思います。これは保護者の方々がとても子どもたちの安全に対して意識が高い方が多いので、その期待に応えていきたいという思いもありますね。

本校の通学路は広い道路も多いですが、朝には通学路に保護者の方が立ってくださっていますし、通学時間についても、子どもが一斉に通学路に出てこないように、時間差で子どもを送り出してもらえるようにお願いをしています。また、朝は全員が集団登校で、夕方は1年生だけが集団下校になっています。それ以外は基本的に自由下校なのですが、あまり学校に児童を残すようにはせず、安全な時間に一斉に帰れるように配慮しています。

他にも、通学路の安全にはかなり気を遣っておりまして、死角になりそうな場所があれば、市の管理者にお願いをして、フェンスの高さを下げてもらったり、交差点のガードレールを頑丈なものに改良してもらったり、高すぎる木を少し切ってもらったり、ということは日々行っています。まだまだ課題はありますが、保護者や地域の方など色んな方の支えを頂きながら、今後も安全で安心して通学できる環境づくりを進めていきたいと思っています。

――今後の学校経営のビジョンについて教えてください。

石川校長:私個人としては「学校教育とはそもそも何か」と考えた時に、やはり学校の機能としては「子どもが良い授業を受ける」ということが最も大事だと思っています。最近は教員の負担の重さなどがしばしば話題になっていますし、教員の働き方改革も重要になってきています。そのような流れの中で、私は今こそ“学校が背負い過ぎていた部分”を、少し家庭に返していく時期なのではないかなと思っています。

石川校長先生
石川校長先生

学校が最も重視すべき「授業」を私たちは力の限り責任を持ってやっていきたいと思っていますが、現状では教職員があまりにも忙しすぎるため、それが十分にできていません。
しかし、どの教職員も「どこにも負けない授業を子どもたちに受けさせたい」という強いを思いを持っているので、環境がより良くなって時間を確保できるようになれば、授業研究に力を注ぐことができ、もっともっと良い授業を提供できるはずなんです。そしてそこには、ご家庭の理解と協力というものが欠かせないんです。

学校と家庭がお互いに協力し合うことができれば、教職員が本来のパフォーマンスを発揮できるはずで、それが授業にも出てくると思うのです。その結果、「授業が楽しい」「先生が大好き」「クラスが楽しい」「学校に行くのが楽しみ」となっていきます。「あふれる笑顔、輝くひとみ」という言葉には、そんな思いも込めています。

子どもたちの席
子どもたちの席

――熱い思いをありがとうございます!最後に、浦和美園の街の魅力について教えてください!

石川校長:一言で表すのは難しいので幾つかの言葉で言わせて頂くと、「活気がある」「活力がある」「若さがある」「バイタリティがある」「チャレンジ精神がある」という街だと感じています。この街では老若男女問わず、みんなが現状にとどまることなく、変化に対して柔軟に対応する気概を持っていて、この美園という街に住んでいるということに誇りを持っていらっしゃるんだな、と感じています。すごく前向きな気持ちを持った方が多いですね。

大人も子どもも、みんなこの美園のことが大好きで、誇りを持って生活している。そんな街ですね。あるひとりの子は、「みんなが優しいから、この街が大好き」とも言っていました。そういう声が子どもたちから聞こえる街というのは、やっぱり良い街だと思います。

校長 石川顕一先生
校長 石川顕一先生

さいたま市立美園北小学校

初代校長 石川顕一先生
所在地 :埼玉県さいたま市緑区美園2-12-11
電話番号:048-812-2277
URL:http://misonokita-e.saitama-city.ed.jp/
※この情報は2019(令和元)年10月時点のものです。